ますます興味をそそる「トランプ人事」の驚愕 焦点のFRBはイエレン前議長の再登板も?

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実はトランプ大統領は、マルバニー行政管理予算局長をエアーズ氏以外の選択肢ないし隠し玉として、密かに温めていたフシがある。内心で自信満々たる会心の「トランプ人事」だったのではないか。そこにはトランプ大統領ならではの高度なメッセージが込められている。

そのメッセージとは、第1に、行政管理予算局長の職のまま大統領首席補佐官代行に置いたことは、ウォール街の株式市場へのメッセージであるということ。第2に、金融緩和策をめぐってトランプ大統領が不満を持つ、ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長へのメッセージでもあり、それは同時に、ジャネット・イエレン前FRB議長へのメッセージでもあるということだ。

もともとトランプ大統領は、パウエル議長よりも、イエレン前議長との折り合いがよかったと思われる。今年10月30日のNBC放送で、イエレン前議長は「魔法のつえがあったら債務をゼロにする」と語っており、そのうえで今のパウエルFRB体制は金融引き締めを過度に行うリスクがある、と警鐘を鳴らした。

FRBに送ったメッセージの意味

その”魔法のつえ”発言から、「ロシア疑惑」の”魔女狩り”の被害に遭ったと一貫して主張している、トランプ大統領の心の中では、イエレン前議長への個人的な好感度が確実に上がっている。その意味では、イエレン前議長のFRB議長再登板という選択肢も含めた、新人事が発動される可能性もある。一時はトランプ大統領による、パウエル議長更迭の可能性が噂されたことがある。その説はトランプ大統領によって明確に否定されたが、将来浮上する可能性があるのは、パウエル議長「更迭」論ではなく、「交代」論になるだろう。

FRB議長の自由意思を踏まえた交代というのであれば前例がある。ジミー・カーター元大統領時代、FRBで1年5カ月だけ務めたウィリアム・ミラー元議長は辞任のあと即座に、カーター政権の財務長官に就任している。

思い起こしてみれば、パウエル議長を強く推薦したのは、スティーブン・ムニューシン財務長官だった。そのムニューシン長官も更迭される可能性があると報じられている(ウォールストリート・ジャーナル紙11月23日付)。

トランプ大統領はこの報道を明確に否定しているが、場合によっては将来、パウエル議長が新たに財務長官に(おそらくは長期に)就任するという、いわば鞍替え人事もありうる。その場合、マーケットを安定させるという配慮から、イエレン前議長の再登板という、トランプ大統領とっておきの人事が発動されるかもしれない。これからの「トランプ人事」には目を離せない。

湯浅 卓 米国弁護士

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ゆあさ たかし / Takashi Yuasa

米国弁護士(ニューヨーク州、ワシントンD.C.)の資格を持つ。東大法学部卒業後、UCLA、コロンビア、ハーバードの各ロースクールに学ぶ。ロックフェラーセンターの三菱地所への売却案件(1989年)では、ロックフェラーグループのアドバイザーの中軸として活躍した。映画評論家、学術分野での寄付普及などでも活躍。桃山学院大学客員教授。

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