日本人が知らない「ビッグデータ信奉」の限界 データだけでは「因果関係」まで導けない

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なかなか払拭されない米国経済の沈滞や政治の手詰まり状態とは裏腹に、シリコンバレーのビジョンは希望と楽観に満ちあふれている。その結果、すっかり天下を取った感のあるシリコンバレー流の精神がアメリカの文化的な生活に浸透していて、ハイテク機器へのわれわれの愛着が深まるにつれて、その精神はますます重要な役割を担うようになっている。しかも、日常生活の中でインターネット上で完結する領域も大きくなっている。

どのコミュニティもそうだが、シリコンバレーにも内部に固く根付いた共通の文化や展望がある。シリコンバレーでは、成功のカギとされているものだ。「シェアリング・エコノミー」に「リープフロッグ」(途中段階を経ずに一足飛びに大きく発展する現象)、「フェイル・フォワード」(失敗を糧に前進する姿勢)とか「リーン・スタートアップ」(最低限のコストと短いサイクルで仮説を検証しながら市場ニーズを見極めていく手法)など、すっかり言い古されたスローガンが、今では一般の人々の会話にまで使われるようになった。

「破壊的な想像」を重視するシリコンバレー流

言葉こそ違うが、根底に流れる考え方は同じだ。「何ごとも」技術が解決してくれるということである。そして、その解決策は必ずや革命的なものになるという。

「過去50年にコツコツと積み重ねられてきた小さな改良を足がかりに、当社は〇〇の分野で少しずつコツコツと改良を重ねていく」などと宣言してベンチャーを起業する者は、シリコンバレーには皆無である。過去とはきれいさっぱり縁を切り、未来へと一気にジャンプしようとする破壊的な創造を掲げているのだ。

この文化が子どもの教育や仕事の進め方、われわれの市民意識にも大きな影響を及ぼしている。実際、シリコンバレーは、人文科学に根ざした教育を見下すか、21世紀の仕事には無関係と切り捨てるかのどちらかだ。

有力なベンチャー・キャピタリストのマーク・アンドリーセンが2014年に自身のブログで公開した「文化衝突」と題する記事で、文系科目が時流に取り残されたものと述べるなど、まさにこうした考え方がにじみ出ていた。

そのうえで「数学、科学、技術に精通していない者は、これからの世の中を理解するのがもっと難しくなる」と指摘していた。

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