いつまで続くのか 総合商社の快進撃

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 消えない2つの不安 今の実力は本物なのか

 とはいえ、不安が消えたわけではない。 油田開発では、中国企業が年間1兆円以上を投じる。鉱石や石炭でも、中国、韓国に資源メジャーが乱入し、激しい争奪戦を繰り広げた。これらの結果、権益価格はつり上がっているのだ。

 指をくわえて見ていれば、“将来の飯の種”を失いかねない。といって、やみくもに権益確保に走れば“高値づかみ”のリスクが高まる。

 「正直、われわれも悩んでいる。いろんな案件が山のように来るが、高い買い物ではないか。今のタイミングでいいか。どこと組むべきか。絞り込むのに苦労している」と、三菱商事の小島社長は悩ましい胸の内を明かす。

 資源の権益に限らない。収益力向上と財務改善に自信をつけた総合商社は、投資額全体を引き上げている。つれて、個別案件への投資額も拡大基調だ。このように投資額が大きくなると、マイナスに転じたときのインパクトも無視できなくなる。

 4月19日に丸紅が発表したカリブ海での電力事業への投資は、約700億円と巨額。「投資基準に合う案件しかやらない。原油は長期契約で押さえているし、(地域最大の)ジャマイカでは独占なので、コストが上がっても価格にオンすることができる」(丸紅)とするが、他社幹部は「ウチの基準だとあの投資は難しい」と疑問を投げかける。

 伊藤忠は05年に700億円を投資したオリエントコーポレーションが巨額赤字に陥ったため、07年3月期に純益ベースで410億円のマイナスを被った。

 丸紅や伊藤忠の案件だけが問題なのではない。「高値づかみ」を不安視する声はほかの案件でも聞こえてきた。面白いのは、自社の投資基準は大丈夫としたうえで、他社案件の心配をしている点だ。

 現在の投資の結果が出るのは、資源関連なら数年後。各社が磨いてきたリスクコントロールの実力が本物かどうか判明するのも、また数年後なのである。

(書き手:山田雄大)

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