いつまで続くのか 総合商社の快進撃
総合商社の2007年3月期決算は軒並み最高益。財務体質も改善した。まさに「わが世の春」を謳歌する総合商社だが、熾烈を極める一方の資源争奪戦など不安要因もある。(『週刊東洋経済』2007年5月26日号)
かつて“不要論”を叫ばれた大手総合商社。だが、このほど行われた2007年3月期決算説明会の席上、トップの表情は自信に満ちあふれていた。
「好業績と財務の健全性を踏まえて11円増配する」(三菱商事・小島順彦社長)。
「業績は引き続き好調に推移している」(三井物産・槍田松瑩社長)。
「事業の選択集中と収益基盤拡大の成果が表れた」(住友商事・岡素之社長)。
「稼ぐ力が着実に拡大している」(伊藤忠商事・小林栄三社長)。
「コミットメントを必ず守る企業風土が根付いてきた」(丸紅・勝俣宣夫社長)。
三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅が4期連続、伊藤忠商事は3期連続の連結最高純益を更新。好業績を受け、各社とも増配を発表した。
04年3月期に総合商社で初めて三菱商事の純益が1000億円台に乗った。それから3年、同社の純益は3・6倍の4159億円にまで拡大。5位、丸紅も1000億円台を突破した。
体質改善の徹底が浸透 今期業績は上ブレも
好決算の最大の原動力となったのは資源価格の高騰だ。
原油は04年3月期に1バレル20ドル台の後半だったものが、07年3月期は60ドル超。石炭や鉄鉱石も過去数年で約2倍に値上がりした。過去に獲得した資源権益が「カネのなる木」に化けたといえる。
特に石炭の権益を握る三菱商事、鉄鉱石に強い三井物産は、純益の6割以上を資源で稼ぎ出している。
資源高の恩恵は大きかったが、それだけではない。非資源事業も収益力は着実に向上している。
「もともと総合商社は稼ぐ力があった。ただ、あちこちでたくさん損もしていたので利益が低かった」と、総合商社幹部は解説する。
1990年代後半の長期不況を生き延びるために、各社は事業や投資のリスクとリターンを厳密に管理するようになった。要はどんぶり勘定を改めた成果が、現在につながっているというわけだ。
総合商社の「わが世の春」はいつまで続くのか。結論からいってしまえば当面、業績が急落する要因は見当たらない。
08年3月期の会社予想は、三菱商事を除いて各社増益を見込む。
三菱商事は年間契約の石炭販売価格が十数パーセント下落すること、前期に1銘柄で200億円以上あった株式売却益が減少することなどから減益計画を立てる。もっとも、純益4000億円は十分に高水準だ。
三井物産の計画は685億円増の3700億円と最も強気。ただ、インドでの鉄鉱石権益の売却(約500億円の純益押し上げ)などを勘案すればさほど高い目標ではない。
各社とも、為替や資源の前提は足元に対して若干保守的である。中国など新興国の需要増を考えると、資源価格が下落トレンドに入ることは考えにくい。株式の売却益などを見込んでもいないだけに、実際の着地は上ブレする公算が大きい。