珍駅名「高輪ゲートウェイ」をMBA的に考える 「問題解決アプローチ」で解決策を提示

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今回の命名についても、日本人は冷めやすい、あるいは諦めやすいという側面もありますので、このままこの名前で進めたとしても「喉元過ぎれば」になるという見方は確かにありえます。

たとえば、珍命名の代表とされる30年前の「E電」はどうだったでしょう。「E電」は、当時の国鉄の分割民営化に伴い「国電」の代わりとして名付けられましたが、この名称は使わなくても問題ありませんでした(結局浸透したのはJRの呼び名です)。

しかし今回は駅名ですから、利用者も名前を使わないわけにはいきません。おそらく「高輪」「高ゲー」「高ゲト」などの短縮形で使われるようになり、そのうちに慣れるということは確かにあるでしょう。ダサいネーミングや募集結果を無視したという批判さえ甘受すれば、このまま嵐が過ぎるのを待つというのは確かに1つの手です。

とはいえ、JR東日本はある意味公的な性格を持つ企業ですから、それがベストかといえばそうとも言えません。企業の社会的責任(CSR)が注目される中で、「過ちは認め、ふさわしい名前をふさわしい方法で選び直す」ということも十分検討に値しそうです。

社内事情やデベロッパーとのしがらみなどの詳細は不明ですが、それらを調整できるのであれば、これはJR東日本にとってもむしろ好感度を上げるチャンスかもしれません。そう考えると、この問題は決して小さな問題ではないと言えます。

新駅名の「あるべき姿」とは?

次に紹介したいのが、「問題とはひと言で言うと、目標(あるべき姿)と現状とのギャップである」という言葉です。これはノーベル経済学賞を受賞したハーバート・A・サイモンの言葉です。

問題解決のアプローチでは、最初に「あるべき姿」についてすり合わせることを重視します。たとえば開業医の子どもの成績が振るわない場合、「医学部に合格するだけの学力をつける」だけがあるべき姿ではありません。「本人が、自分のやりがいを感じつつ生きられる人生を選べるようにする」というのも1つのあるべき姿なのです。

では、今回の場合の適切な「あるべき姿」は何でしょう? 悩ましいのはステークホルダーが多数いることです。一般市民にとっては呼びやすく品格を備えた名前に決まることが望ましいでしょう。これはインバウンドの海外潜在ユーザーにとっても同じと思われます。グローバル時代ですから、できれば多くの外国人に発音しやすいほうがいいかもしれません。

そこで鍵になりそうなのは、やはりJR東日本内部、あるいはデベロッパーとの関係です。ひょっとしたらすでにこの名称を織り込んで進んでいるプロジェクトがあるかもしれません。

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