獺祭チョコレートはなぜこれほど人気なのか こだわりは「磨き二割三分」だけではない
そして、サロン(カフェ)のみで提供しているドリンクが「ショコラ ネスパ?!」(900円)。見た目は透明だが、味はチョコレート、という不思議な飲み物だ。カカオ豆・砂糖・炭酸ソーダだけを使い、香料は用いていない。メニュー名のとおり、口に含んだときの驚きは、まさに「?!」である。2009年の夏に季節商品として発売され、今は定番のドリンクとして定着。ドリンクにはシャーベットが浮かべられているが、ドリンクと同じ味のシャーベットのほか、ベリーやシャンパンなど合わせて3種類用意されている。好みや気分によって、異なる味のハーモニーを楽しむこともできるわけだ。
最後に、獺祭の旭酒造の情報も紹介してまとめとしたい。獺祭は、国内・海外2つのマーケットが同時に接戦し合いながら伸びてきたという、珍しい日本酒だ。というのも、ひたすら酒造りに資金を投じているため、広告にも最低限のお金しかかけられない。地元の居酒屋での、お客を通じた口コミから、じわじわと評価が高まっていったという。
「そうしたお店に来られるお客様にはなぜか、世界を股に掛けて活動している方が多かったのですね。自分の出張先や赴任先にある居酒屋で、獺祭を紹介してくださったようです。そのため、先に海外で人気が出たと言えるかもしれません。獺祭を扱っているお店は最初海外のほうが多いぐらいでしたね」(桜井氏)
ヨーロッパ、アジアにまで広がる獺祭の網
実際、同社のホームページでは、「獺祭の飲める店」が国内版と海外版に分けて掲載されている。アメリカ主要都市やパリ、モナコ、シンガポールなど、ヨーロッパ、アジアにまで、獺祭の網が張り巡らされているのだ。
じわじわと広がっていた火種が、大きく燃え上がったのが2007年ごろ。それまでは「だっさい」と正しく読んでくれる人も少ないぐらいだったが、iPhone4が発売されたときに一発変換が可能になっていたという。
「うちもやっとここまできたんだな、という思いでした」(桜井氏)
売り上げの推移を見ると、2008年9月期(2007年10月~2008年9月)の売り上げは約7億4000万円と、前年の5億4000万円台から大きく伸びている。その後も一定のペースで成長を続け、2018年9月期の売り上げは138億円を超えた。
2018年の6月には、フレンチの巨匠ジョエル・ロブション氏(8月に物故)との協力により、「ダッサイ・ジョエル・ロブション」をオープンした。フランス料理に合わせて獺祭を味わうことができる同店は、ル・フィガロにも紹介されるなど、すでにパリジャンの評価を得ているという。
また、現在同社で進行しているのがニューヨーク酒蔵プロジェクトだ。11月12日には建設予定地の地鎮祭が行われた。ニューヨークの料理大学「カリナリー・インスティテュート」が日本酒に関する科目を設置するうえで、旭酒造に協力を求めてきたのが、プロジェクトの発端となったそうだ。
「ニューヨークに酒蔵を造る理由は2つあります。まず、獺祭は海外の日本酒マーケットの1割を占めていますが、まだ『一部の日本好き』を対象とした未成熟な市場です。日本に興味がない人も巻き込んだ市場に育てていくために、パリのお店とアメリカの酒造を拠点にしたいと考えています。
もう1つは、会社の体質を強くするためです。気候も水も違うアメリカでの日本酒造りは、失敗も当然あるでしょう。それをアメリカだけでなく、国内でも共有して酒造りにフィードバックしていくことが、獺祭、そして当社の成長につながると考えています」(桜井氏)
パレ ド オールと旭酒造に共通しているのは、チョコレート・日本酒というそれぞれが持つ本質的なおいしさを、どこまでも追求する姿勢だ。この2社が手を携えて生まれたハイブリッド商品が獺祭ショコラ。発売以来ヒットを続けるのもうなずける。
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