アウディが見せた「EV」の圧倒的すぎる進化

e-tronは12気筒エンジンにも勝るほど静かだ

加えてここにエアサスペンションによる優れた乗り心地が加わるため、その乗り味はさらに上品なものに感じられる。試乗場所となったアブダビは、非常にきれいな路面が多かったために、余計に乗り心地よく感じたこともあるが、それにしても車両重量約2.5tとなるこのヘビー級だけに、まずは重さによる乗り心地のよさがしっかりとあり、それをエアサスがしっとり動かすため、圧倒的な心地よさが生まれる。

しかもヘビー級ながらハンドリングにも優れている。これはサスペンションが2.5tのボディをしっかりとコントロールしていることに加えて、前後のモーターの機械式にはできない素早い反応と見事な連携による駆動力配分によって、コーナリングをより効率的に実現してくれている点も見逃せない。

ワインディングでも実にコントローラブルな走りを披露した(筆者撮影)

今回、試乗途中にジャベル・ハフィートと呼ばれるワインディングを試したが、ここでも驚異的なコーナリングを見せてくれた。2.5tのSUVながらも、アクセルのきめ細かな操作に反応する動きをみせる、実にコントローラブルな走りを披露したのだった。さすがに下りでは重さを感じるものの、それでも重量を考えれば驚異的なハンドリングといえる。

未舗装路で上品な走りを実現

また電気的な4輪駆動制御を行っているため、ウェット路面や雪上、氷上などでも実に緻密な制御による高い走破性を実現するだろう。実際に今回はオフロードセクションも用意されていたが、かなりのところまでは走れるオフロード性能があったし、さらに自らハンドルを握ったフラットダートでは振動こそ伝わるものの、これほど上品な走りを未舗装路で実現するクルマには初めて乗ったといえる経験だった。

さらにユニークなのはパドルシフトでブレーキの回生量を変化させることができ、通常の状態から、少し回生が強まる状態、さらに回生が強まる状態を選ぶことができる。日産リーフのようなワンペダルほど、アクセルだけで走るという感覚ではないが、それでも多少の減速までは行えるし、好みで回生の強さが変えられる点はいいところといえる。

e-tronのブレーキは電気油圧式を用いている。まず通常の18インチサイズのブレーキが与えられ、前は6ピストン、後ろはシングルピストンとなる。しかしこのブレーキは、ドライバーがブレーキペダルを強く踏み込み、0.3Gを超える減速が発生したときに使われるもので、それ以外では前後の電気モーターによる回生を通じて減速を行っている。この結果、通常走行においては90%が回生ブレーキを用いており、ほとんどホイールの通常のブレーキを使わずに済むのだという。

今回、e-tronを走らせるほど、素直に「欲しい」という思いが強くなった。これほど静かで滑らかで力強い乗り物はほかにないし、これぞ未来といえる1台である、と強く確信した。限られた試乗ゆえにそのすべてを知ったわけではないが、商品性の高さは圧倒的であり、筆者はその走りにかなり興奮させられた。

今年は高性能なスポーツカーにも当然乗ったし、新たなUIを備えたクルマにも驚かされたが、このe-tronはそうした中でも別格といえるほど優れたプロダクトだと感じた。

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