アウディが見せた「EV」の圧倒的すぎる進化 e-tronは12気筒エンジンにも勝るほど静かだ
アクセルを踏んで走り出した瞬間、「これまでのすべてのクルマが過去に追いやられた」と感じた。ついに送り出されたアウディのピュアEV(電気自動車)である「e-tron」は、筆者に今年試乗したクルマの中でこれが最も優れた1台であるということはもちろん、ついに「自動車は次のステップに足を踏み入れた」というような大げさともいえる思いを瞬時に抱かせたのだった。
要はそれほどまでに、e-tronの走りは強烈なインパクトを伴っていたのだった。
次元の違う「新世代の乗り物」に感じられた
もちろん筆者はこれまでに、数多くのピュアEVを試乗してきている。そしてEVならではの魅力やクルマのよさは重々承知しているつもりだった。たとえば内燃機関を搭載せず、モーターだけで走るので、静かで滑らかで力強い加速が生まれ、これだけで並の高級車をしのぐ。さらにモーターの反応の速さや制御の巧みさで、車両の運動性能も飛躍的に高まる……といった具合である。
しかしながら、そんなふうにして認識していたこれまでのEVというものが、いわゆる内燃機関を搭載したクルマと意外に近かったのかも、とe-tronに触れたことでそう思えた。
なぜならe-tronは、筆者がこれまで試乗してきたEVとは段違いに違う次元にある新世代の乗り物に感じたからだ。
ではいったい、e-tronはどれほどに異次元のEVだったのか? それをリポートする前に、このクルマのプロファイルを見ておこう。
アウディe-tronは、アウディが用いるモジュラーアーキテクチャであるMLBと呼ばれるプラットフォームの派生版を用いている。が、その構造は通常の内燃機関モデルとは異なり、前輪と後輪の間の床板は95kWの容量を持つ高電圧バッテリーが敷き詰められている。このバッテリーは1枚のパウチセルを12枚で1組としたものを36組搭載しており、総重量は700kgに達する。さらに4つの冷却回路とヒートポンプを備えるサーマルマネジメントを搭載している。そしてこのバッテリーは強固なアルミ押し出し材のフレームによって囲われており、衝突などでの変形を防ぐ構造となっている。
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