アウディが見せた「EV」の圧倒的すぎる進化 e-tronは12気筒エンジンにも勝るほど静かだ
先に筆者は、e-tronのアクセルを踏みこんだ瞬間に、これまでのEVと比べても異次元と思えるほどの走りがあると記した。そんなふうに感じた最も大きな理由は、実は静粛性の高さにある。静粛性が異常なまでに高いのがe-tronがほかとは違う異次元のEVである理由になっている。
先にCd値は0.28、バーチャルエクステリアミラ装着車では0.27で、世のSUVとしては最も優れた空力特性と記したが、これによってEVとしての効率に寄与するのはもちろん、風の流れをコントロールすることで静粛性に大きく貢献しているのだ。
それがアウディの説明する空力音響特性。どのようなクルマでも基本的に85km/hを超えたあたりからコンポーネントのノイズよりも風切り音が大きくなるらしいが、e-tronではドアシールやエクステリアミラー、ウェザーストリップに徹底的な対策が施されており、風切り音の室内への侵入を大幅に軽減しているのだという。またフロントウィンドシールドは2重構造を標準装備しており、さらにサイドウィンドーを防音ガラスにするオプションも設定されているという。
またもちろん基本的な吸音材や断熱材も徹底して使っており、設計上存在するボディの開口部や空洞は密封または充填しているという。あらゆる部分で防音対策がとられ、モーター自体もノイズ低減カプセルに封入するなどしている。こうして驚きの静粛性が生まれた。
まるで低速で走っているような感覚
実際、低速で走っているとロードノイズや風切り音は皆無。さらにスピードが上がっていって100km/hを超えても、ほぼ音は入ってこないとすらいえる静けさなのだ。だから100km/hを超えても、まるで20~30km/hと変わらない感覚さえある。
EVは内燃機関がないため静粛性が下がるのが当然だが、これまでのEVはそれがゆえに、ロードノイズや風切り音が余計に目立つという現象に悩まされていた。しかしアウディはそうしたEV特有の“静かだからこそ内燃機関のクルマよりもうるさく感じるロードノイズや風切り音”を徹底的に排除することで、驚きの乗り味・走り味を実現しているのである。
その感覚は、12気筒エンジンを搭載した超高級サルーンですらかなわないような……そう表現したくなるほどの静けさなのだ。
そしてこれだけ静粛性が高くなると、モーターのフィーリングはさらに優れた印象としてドライバーに伝わってくることも間違いない。
もともとEVは静かで滑らかで力強いのがウリだが、e-tronはその静粛性の高さによって、静けさ滑らかさ力強さがさらに2~3割増しに感じられる。
だから走り出してすぐに、筆者は「これまでのクルマをすべて過去にした」と思えるような未来の感覚をそこに覚えたのだった。
動力性能に関しては、当然不満はまったくない。先の数値を見ていただいてわかるように、十分以上に速いといえるものとなっている。もちろん、テスラの「モデルS」や「モデルX」ではもっとパワフルで速いモデルが存在するが、比べてもe-tronの方が魅力的な速さに感じる理由もある。それはテスラにはない静粛性の高さがここに加わっているため、とても上品で力強く滑らかに感じるからである。つまり上品で速いという、新たな魅力がここに生まれている。
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