意外に危険?「ぶつからない車」の実力度 夜間の対歩行者ブレーキはまだ完全ではない

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

つまり、この評価結果の点数は、各条件で「3回のうち2回クリアすれば減点なし」という甘い評価方法となっていたのだ。N-VANはすべての速度条件で1回もダミー人形に衝突することはなかったが、記者たちを乗せた体験乗車では30キロの低速の条件で、3回中1回ぶつかってしまった。

ここから分かることは、たとえ満点をとった車種といえども「完全ではない」という事実だ。これは2017年度に実施された「対歩行者被害軽減ブレーキ」(日中に実施)の試験結果を見ても明らかになっている。満点の日産のノートでも、速度10キロで3回に1回はダミー人形に衝突していたのだ。

「満点」が引き起こす過信

被害軽減ブレーキなど先進安全技術の進化は過渡期にある。ドライバーが無人の自動運転車の実現をゴールとすれば、技術的に乗り越えなければならない壁はいくつもある。満点を与えるのはもっと先であっても良いはずだ。それと同時に、満点という評価をすることで、車を選ぶ消費者に過度な期待を抱かせてしまう恐れがあり、安全運転技術の「過信」による事故も実際に起きている。

2018年度前期の自動車アセスメントの予防安全性能では、車線からのはみだしを防止する「車線逸脱抑制装置」や、ブレーキとアクセルの「踏み間違い加速抑制装置」などの評価も行われ、総合点で10車種中6車種が最高評価を獲得した。しかし、最高評価の中には、夜間の対歩行者被害軽減ブレーキで低評価だった車種や、車線逸脱抑制装置で16点満点中8点しか獲得できなかった車種も含まれている。「最高」という言葉もまた、消費者の過信を招きかねない。

世界保健機関(WHO)は12月7日、世界で年間135万人が交通事故で命を落としているという報告書を発表した。実に24秒に1人が交通事故死している計算だ。自動車の先進技術の追求に終わりはない。悲惨な交通事故を根絶するためにも、安全性能への評価はもっと厳しくてもいいはずだ。

高見 和也 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

たかみ かずや / Kazuya Takami

大阪府出身。週刊東洋経済編集部を経て現職。2019~20年「週刊東洋経済別冊 生保・損保特集号」編集長。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事