筆者が今まで取材した水商売や風俗で働く女性のうち、稼いでいる人の多くに共通しているのが、いくら稼いだのか具体的な金額を覚えていないという点だ。以前取材したセックスワーカーの女性は、日払いだからその日のうちに買い物で使ってしまう、知人の元キャバクラ嬢は外車を買えるくらいホストに貢いだと語っていた。まさに、水のように消えていくお金と言えそうだ。逆に、稼げないキャバクラ嬢や風俗嬢はしっかりと金額を覚えていることが多い。
友美さんも具体的な金額は覚えていないものの、貯めたお金でニューヨークやパリに旅行に行き、大学3年生のときカナダのモントリオールに留学した。
「モントリオールでは現地で口座を開設し、自分で部屋を借りました。勉強も頑張ったけど、パーティーに行って遊んでいました。絵に描いたようなパリピだったんじゃないかな(笑)。いろんな文化が混じり合っていて楽しかったです。でも、信頼していた子にカメラを盗まれたこともあって、陰と陽のオーラが混ざり合っているとも感じました」
海外で得た価値観が就活で不利になることも
1年間の留学を終えて帰国し、卒業するために単位の修得に必死になった。大学の近所に住まないと学校に通わなくなって単位が取れないと思い、家賃は9万円もしたが大学の近所にマンションを借りた。そして、同時に就活も始めた。夜はレストランでバイトもした。時給は1000円ほどだった。一度キャバクラで高収入を体験していると、時給1000円はバカらしくならないのだろうか。
「それが、カナダに行っていろんな価値観を得て帰ってきているので受け入れられました。細かいことを気にしても仕方ないなと。もともとのポジティブな性格に加えて、いい意味での楽観的な考えを持つようになって。それから、日本人って主張するのが下手だし、はっきりものを言うのはよくないとされているけど、そういうのも違うんじゃないかと思うようになりました」
しかし、その価値観が就活をするうえで合わないこともあった。とある役所のOB訪問をした際「君、絶対向いてないと思うよ」と言われ、不覚にも涙を流してしまった。海外から帰ってきたばかりの友美さんの態度が日本人の価値観からすると生意気に見えたようだ。
その後は商社と出版系に絞って就活をして、内定が出てインターンも経験したが、その内定を蹴ってしまった。そして、ライター募集の掲示板で見つけた編集プロダクションに応募をし、アシスタント業を始めた。そこの社長から某新聞社の内勤を紹介されて、大学卒業後の春から新聞社に非正規雇用で入社した。
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