「お金持ちは年金をもらえない」という逆差別 数千万円も払って「捨てろ」はおかしくないか

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年金財政が厳しい状況のなか、「65歳以降も豊かに暮らせるだけの稼ぎがあるなら、受給する必要はない」という声が多いのも確かでしょう。しかし、私たちと等しく支払った保険料に対する「権利」という目で見ると、ひとごととして知らないふりもできないのではないでしょうか。実際、それに該当する方の例を見ていきましょう。

年金がもらえないなら「生涯現役」も考えもの?

Aさんは、2代目社長です。父親が経営していた会社に大学卒業後の23歳のときに就職。30歳のとき、父親の急逝により社長を引き継ぎました。会社の規模は、従業員30人ほどです。自分の代で規模が大きくなることはなかったものの、堅実に経営をしてこられました。現在65歳、後継者がなかなか見つからないのが目下の課題だそうです。とはいえ、今までお世話になってきたお得意様もいるので、できる限り長く仕事を続けたいと考えています。

Aさんは、20歳から国民年金に加入し、就職後の平均報酬月額は(給与の平均)40万円、社長就任後の平均報酬月額は80万円でした。

2018年(平成30年度)の国民年金保険料は1万6340円、厚生年金保険料は18.3%です。厚生年金保険料は労使折半ですから、9.15%が被保険者本人の負担率です。今回は計算を簡素化するために2018年度の保険料率を用い、Aさんが負担した保険料とAさんの年金額を見ていきたいと思います。厚生年金は標準報酬月額(年度始まりの受け取り給与の平均値)62万円を上限としていますから、役員報酬が実際いくらであってもその上限は62万円なので、Aさんの場合も62万円として計算します。

Aさんが20歳から60歳までに負担した保険料は、合計2432万8560円でした。改めて計算してみると、相当大きな負担です(国民年金2年、平均報酬額40万円で8年、その後62万円で30年として計算)。ちなみに、社長就任後のAさんの役員報酬にかかる会社が負担する保険料も、社長であるAさん自身の負担であると考えると、厚生年金保険料の負担額は、合計4475万1360円です。

では、Aさんが仮に60歳でリタイアしていたら65歳の今、受け取れる年金はいくらでしょうか。

Aさんは20歳以降保険料の未納はありませんから、老齢基礎年金は満額の77万9300円で、老齢厚生年金は143万3830円です。もし65歳から90歳まで年金を受給すれば、5532万8250円もの年金が受け取れるわけです。高額な保険料を負担しても、これだけ受け取れれば支払う意義を見いだせるのではないでしょうか。「長生き保険」として十分機能しているとうなずけます。

しかし、実際のAさんの場合、少し様子が違います。老齢基礎年金は在職老齢年金とは関係がありませんから、Aさんは受給の権利を失うことがありません。問題は老齢厚生年金です。Aさんが生涯現役を貫いた場合、この140万円もの「老齢厚生年金を受給する権利」がどうなるのかを見ていきましょう。

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