新幹線の途中駅、久留米のタフな生き残り策 「福岡一極集中」強まる中いかに戦ってきたか

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近年、さらに大きな転機をもたらしたのは、撤退した百貨店の跡に2016年にオープンした文化交流・コンベンション施設の久留米シティプラザだ。

市民会館の後継施設として、ホールや会議室、展示室などから成り、大屋根が付いた多目的広場やコミュニティFMのスタジオも併設されている。178億円の巨費を投じ、着工に際しては議論も呼んだというが、2000人規模の学会にも対応可能で、昨年度の来訪者は約58万人ともいう。

2016年、市中心部に建設された久留米シティプラザ=2018年9月(筆者撮影)
まちなかコンシェルジュのお勧めの店を集めたマップ=2018年9月(筆者撮影)

行徳氏は「飲食、宿泊面での波及効果は大きい。シティプラザの完成によって、まちづくりに関するさまざまな事業のベクトルがそろってきた」と強調する。

2017年度末には、地元の見所やグルメスポットを紹介できる「街なかコンシェルジュ」を8店舗認定し、シャッターが閉まった店舗前を利用してお勧めのマップを貼り出し始めた。かわいらしいイラストは、ビジュアルを担当するスタッフが描いている。 

整備新幹線の開業では、もっぱら東京や大阪、福岡など大都市と終点地域との時間距離短縮が注目され、施策も観光振興に偏りがちだ。

一方で、久留米のような大都市近郊型の都市は時間短縮の恩恵が希薄で、利便性の向上に伴うベッドタウン化の進展、購買力の流出といった影響を複雑に被ることになる。

「お客は黙っていれば博多に向かう。お金を投じてイベントを開催しても、お客を無理に久留米で降ろすことはできない。ならば、地元ならではの宝や食をアピールして、日帰りでもいいから、福岡に集まるお客に周遊してもらうJターン効果を狙ったほうがいい。久留米はフルーツが強く、名産の柿や巨峰など、外国人に好評の甘いフルーツを楽しんでもらえる。蔵の数が多いことに着目して、発泡性の日本酒のブランディングにも着手した。交流人口が増えて、商店街の意識は着実に変わってきた」

行徳氏は力を込めながらビジョンを語る。

地の利を活かす「まちづくり」

久留米市の一連の取り組みは、新幹線の時間短縮効果の大きさや大量輸送機能よりも、福岡市から至近の利便性に着目した点で、他の整備新幹線沿線の事例とは趣が異なる。

産業面への波及効果や住民生活の変化、トータルな経済効果については、市も資料やデータをまとめておらず、今後さらに調査が必要だが、「最良の新幹線対策は最善のまちづくり・地域づくり」と考えてきた筆者にとっては、新幹線や新幹線駅の利用者数の増減にとどまらず、空き店舗率の改善や「まちゼミ」参加者といった指標を意識できた点は大きな収穫だった。

新幹線開業がもたらす地理的、時間的な関係性や優位性の変化を強く意識しながらも、新幹線対策というより「まちづくり」を着実に進めてきた久留米市の姿は、これから開業を迎える地域だけでなく、すでに開業した地域の参考になりそうだ。

櫛引 素夫 青森大学教授、地域ジャーナリスト、専門地域調査士

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くしびき もとお / Motoo Kushibiki

1962年青森市生まれ。東奥日報記者を経て2013年より現職。東北大学大学院理学研究科、弘前大学大学院地域社会研究科修了。整備新幹線をテーマに研究活動を行う。

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