日本とアメリカ「貿易戦争」にならない理由

1980年代の繰り返しはあり得ない

これは、つまり、トランプ政権がこうした政治的猛攻に対する防衛に忙殺され、守勢に回らざるをえないことを意味している。その結果、アメリカの対応がいや応なく必要とされる国際的危機の発生でもないかぎり、外交政策に関連した問題に全力で取り組む余力をトランプ政権は持ちえなくなる可能性がある。

第二に、トランプ政権が対外経済政策に取り組むとするならば、対象は日本ではなくむしろ中国となるはずである。その理由は、中国経済の規模の大きさ、中国によって引き起こされている経済的問題に加えて、アメリカの優位性に対して中国が政治的、軍事的な脅威となっているからである。

中国の巨大な影に日本は隠れている

日本経済が隆盛を極めた1980年代においても、アメリカにとって日本は現在の中国のような脅威ではなかった。中国がアメリカにとっての政治的、軍事的脅威となっているとの認識は、大統領上級顧問ピーター・ナヴァロや米国通商代表(USTR)のロバート・ライトハイザー、商務長官ウィルバー・ロスといったトランプの側近たちだけのものではない。以前中国擁護派であったアメリカの企業幹部や学識経験者たちの中にも、習近平政権下の中国の反自由主義的、反民主主義的傾向に幻滅した人の数は増加し続けているのである。

1980年代には、日本は多くのアメリカ人に強力な経済的ライバルとして畏怖されていたが、現在ではそびえたつ中国の巨大な影に日本は隠れている。中国に対するアメリカの不満は大きい。貿易赤字、関税、非関税障壁、通貨操作、強制的技術移転、知的財産権侵害、不当廉売、サイバー攻撃、国有企業への助成金など、批判の対象となっている事項は経済的問題だけに限っても多岐にわたる。

第三に1993年に行われたギャラップ調査では、日本のアメリカに対する貿易政策は公正だと考えているのは回答したアメリカ人のうち24%のみだった。カナダの貿易政策については77%、EUの貿易政策については52%が公正だと回答していたのと比較すると、日本の貿易政策が公正だと答えた人は少ないといえる。

だが、2018年になると、回答したアメリカ人の55%が日本の対米貿易政策を公正だと認識している。31%の増加である。この年の調査では、カナダの政策については65%、EUについては56%が公正だとしており、日本はこれらの地域と同等の評価を得ている。

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