ゴーン逮捕で想定される最悪の反撃シナリオ ルノーと日産の関係はいったいどうなるのか
問題は、日産だけではない。日本流の「自白」に頼った捜査方法で、国際的な経営者を逮捕、長期拘留している現状に対して、国際的な批判が噴出する可能性もある。ゴーン逮捕がもたらす負の部分があまり報道されていない中で、今後、想定できる日産や特捜部が意図しないシナリオを中心に考えてみたい。
有価証券報告書虚偽記載は「故意犯」?
そもそもゴーンの容疑は「金融商品取引法=有価証券への虚偽記載」で、最高で懲役10年という重い罪だ。金額が大きいとはいえ容疑者を逮捕、長期勾留が必要だったのか。とりあえず別件逮捕して、そのうえでの「自白」による起訴を日本の特捜部は狙っているように見える。
たとえば、同じ金融商品取引法違反で摘発されることの多いインサイダー取引などは在宅起訴されることが多い。少なくともフランスでは、有名人であろうがこの程度の犯罪では、最長でも4日程度の拘留で釈放される。
にもかかわらず、日本の特捜部は最短でも20日間程度の拘留を目指して、ゴーンを逮捕したといわれており「自白」以外の明白な証拠をきちんと押さえているのか、日産側の主張を鵜呑みにしているのではないかという疑惑も出てくる。
いずれにしても、今回の逮捕劇は日本で働く外国人にとって少なからずショックを与えたことは間違いないだろう。日本人同様に微罪で逮捕されて、数十日間拘留されるのではないか、その間に自白を強要されるとすれば、日本の司法システムに恐怖感を覚えるはずだ。
そもそも今回の逮捕劇によって、今後何がテーマになっていくのかをまず整理する必要がある。大きく分けて3つある。
② ルノーによる日産支配のシナリオはどうなる?
③ ルノー、ゴーン側の日本への反撃はないのか?
まずは、今回の特捜本部が狙ったシナリオどおりに、ことが進むのかどうかだ。日本では特捜部や日産からの情報提供によって、数多くの疑惑が報道されているが、海外では証拠もなしに軽々しく報道はしない。そう考えると、メディアの報道も鵜呑みにしてはいけないような気がする。
たとえば、ゴーンが得た報酬のうち、メインは80億円余りを有価証券に申告していなかったという疑惑だが、どのメディアも「脱税」という文字を使っていない。ということは、特捜部が当初から「脱税容疑」での立件は考えていないことを意味する。
自白などによって立件できればする、という消極的なものかもしれない。
あと残るのは、特別背任罪や横領ということになるが、これもオランダ子会社を設立して、この子会社の資金でリオデジャネイロやベイルートの物件を購入。ゴーンに無償で提供されたことになっている。ただ、連結にも入っていない子会社を舞台に、10兆円超の売り上げがある企業の代表権を持つゴーンの特別背任罪が問えるのか、という疑問が出る。
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