ゴーン逮捕で想定される最悪の反撃シナリオ

ルノーと日産の関係はいったいどうなるのか

ルノー、日産そして三菱の3社がどうなるのか。今後の成り行きは不透明極まりないが、ここまでは日本の特捜部と日産のルノー出身以外の経営陣にとっては思惑どおりなのかもしれない。とはいえ、日産自動車そのものも法人として「金融商品取引法」で罰せられることになるだろうし、日本人経営者を「司法取引」で救済したことが、はたして裁判で正当化されるのかが問題になる。

また、このままゴーン側が何もせずに反撃しないとはとても考えられない。ゴーンの裁判も、保釈後に帰国して来日を拒否しても、裁判を維持できるだけの証拠をそろえておく必要がある。ゴーン逮捕直後に、フランス大使自らゴーンに接見したことを見ても、彼がフランスにとっても特別な人であることは間違いない。

特捜部がリークする情報を流し続けている日本のマスコミも、ルノーやゴーンからの損害賠償請求に飛び上がるかもしれない。国際問題に発展したときに、特捜部や日産はゴーン逮捕の反撃シナリオに備えておく必要があるだろう。

TOB(株式公開買い付け)合戦になる

フランス政府やゴーン率いるルノーが、日産・三菱連合に対してどんな報復手段を取ってくるのだろうか。第三者が登場してくる可能性はないのか。今後、考えられるいくつかのシナリオを紹介してみよう。

① TOBを仕掛けられる

TOBは、友好的買収、敵対的買収に際して行われる手法で、詳細は省くが市場外で上場企業の5%を超える株式を取得して、株式市場内で買い集める分と合わせて10%超取得した場合、最終的に議決権の3分の1を超えて株式を買い集める場合は「TOB」が必要になる。

ルノーが日産に対して会社を合併できる3分の2の議決権を目指してTOBを仕掛ける、あるいは日産がルノーに対して議決権を解消できる25%の解消を目指してTOBを仕掛ける、といったことも考えられる。現実的にはなかなか難しいことかもしれないが、株式市場ではよくあることといっていい。場合によっては、互いに自社株買いやTOBを掛け合って、議決権確保に奔走することになる。

そこで、問題になるのが「時価総額」の規模になる。

時価総額の小さな企業がより大きな企業を買収するケースはよくあることで、時価総額約4兆円の日産自動車に対して、約2兆7000億円程度のルノーが買収=完全支配に動く可能性も考える必要がある。しかも、ルノーにはバックに仏政府の存在がある。

日本で最初に行われた敵対的TOBは、1999年5月に行われた英国の「ケーブル・アンド・ワイヤレス(C&W)」による「国際デジタル通信(IDC)」買収だったといわれている。NTTによる買収がうわさされていたときに、横からさっとTOBを仕掛けて、伊藤忠商事などの大株主もその買収提案に乗ったケースだ。

C&Wのバックには英国政府の後押しがあったといわれており、しばしば政府によるバックアップがTOBの成否を決める。

ひょっとしたら、EV(電気自動車)時代の到来を見据えて中国のアリババや韓国のサムスン電子あたりが、日産やルノーに対してTOBを仕掛けてくる可能性もあるかもしれない。投資会社などから見ても、今回のようなスキャンダルにまみれた日産やルノーは「M&A(企業買収)」の格好の対象となるかもしれない。

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