ゴーン逮捕で想定される最悪の反撃シナリオ ルノーと日産の関係はいったいどうなるのか

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現在の日産の持ち株比率は、ルノーの43.4%(2018年9月現在、以下同)を最高にして、自社株が7.33%、チェース・マンハッタン銀行3.42%、そして日本マスタートラスト信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、日本生命といった会社が続く。

自社株とルノーの持ち株で50.7%に達しているのだが、ルノーが7%の株式を市場から、あるいはほかの投資会社から手に入れれば、過半数を抑えることになり、現在の役員をすべて解任して、新しいトップを置くことも可能になる。

ちなみに、会社支配に必要な株式数は通常は50%超でいいのだが、拒否権を持つ黄金株などがあれば議決権の3分の2以上を確保しておく必要がある。とはいえ、上場企業のような不特定多数の株主が多い場合は、20~30%の議決権でも会社を実行支配できるといわれる。

日産自動車が日本企業のままでいることのほうが将来性は高いのか、それともフランスのルノー傘下に入ったほうが企業としての成長性は高いのか……。そこはビジネスの理論が優先して、企業の国籍は二の次になるのかもしれない。

大株主であるルノーがこのまま黙っているとも思えない。ある程度の準備をしたうえで、海外メディアで「日産のブルータス」といわれる西川廣人社長やそれ以外の経営陣に対して、何らかの形で報復をしてくる可能性がある。

日本政府にゴーン逮捕の正当性について説明責任は?

一方、フランス政府の動きにも注目する必要がある。

マクロン仏大統領は、自国第一主義を標榜するトランプ米大統領に面と向かってグローバリズムの重要性を唱える政治家だ。支持率が落ちていることもあって、そう簡単に日産、三菱連合をあきらめるとは思えない。

しかも、今回のゴーン逮捕はフランス大使館の神経を逆なでするようなタイミングで行われている。日仏友好160周年記念行事期間中の逮捕となり、フランス政府はメンツを潰されたと言える。

もう1つ疑問に残るのが特捜部の狙いだ。海外メディアでは、盛んに日産自動車がルノーに経営統合されて不可逆的な形で「フランスの日産」になってしまうことを阻止するために特捜部が動いたのではないか、そんな憶測が広がっている。

もし本当にそうであれば、これは権力による民事介入になる。ゴーン逮捕直後、特捜部が「(逮捕容疑の)ほかに意図して動いたわけではない」 といった声明を発表したが、裏側には何らかの意図があるという見方もできる。

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