ゴーン逮捕で想定される最悪の反撃シナリオ ルノーと日産の関係はいったいどうなるのか
ちなみに、こうした会社の支配権を求めて戦うことを「プロキシーファイト(委任状争奪戦)」というが、日本企業は概して不慣れで経験も少ない。
② ルノーが日産自動車株を第三者に売却する!
ルノーにとって日産や三菱とのアライアンスは必要不可欠、と読んでのゴーン排除を進めたのだろうが、ルノーにとって3社アライアンスは、あくまでもゴーン会長というカリスマ経営者の存在があってのことだ。ゴーン会長がいないのであれば、また話は変わってくる。
時代の大きな転換期で、日産と組むメリットがないとルノーの経営陣が判断すれば、ルノーが保有する43%の日産株を第三の企業に売却してしまうことも考えられる。あるいは日産がルノーの保有株を全部引き受けるケースも考えられる。
③ 日産自動車がルノーを買収する
日産の現経営陣がトップを検察に突き出すにあたっては、その後のさまざまなシナリオもシミュレーションしたはずだ。たとえば、日産自動車がこれまでゴーンに止められていたルノーの株式を買い占めて、25%の株式を手中に収めようと考えるのは当たり前のことだ。日本の会社法ではルノーの議決権を25%保有すれば、ルノーの日産に対する議決権が相殺されて、両者の支配関係はなくなるからだ。
もっとも、そんな事態をマクロン仏大統領が黙って許すはずもない。そもそもマクロン大統領は、オランド政権時代に経済・産業・デジタル大臣として2年以上保有する株主の議決権を2倍にする「フロランジュ法」を成立させており、ルノーが日産自動車を経営統合させてフランスの会社にしようと画策していた当事者だ。しかも、現在では日産の下に三菱自動車まで付いてくる。
日産がルノー株を手に入れるためには、相当の覚悟を持って挑むしかなさそうだ。
そこで問題になるのは時価総額だが、日本企業はもともと少なく、トップのトヨタ自動車でさえ約22兆円程度しかない。世界のトップ企業は100兆円を超える「アップル」をはじめとして50兆円以上の時価総額を持つ会社が多い。
わずか4兆円程度の日産は、このグローバル社会の中では考えられないことだが、これまでルノーの傘下であったこと、ゴーンというカリスマ経営者がいたことを考えると、無理もないのかもしれない。
とはいえ、ルノーの株式保有比率を現在の15%から25%に増やさなければ、3分の1の株式を保有するルノーは、重大な決定事項を拒否できる。50%を超えれば、役員の選任も可能になる。
カギを握っているのは日本側なのか
むろん、こうした最悪のシナリオだけでなく、とりあえずゴーンが素直に罪を認めて、経営から足を洗い、お互いにウィン・ウィンの3社アライアンスを形成できる可能性もある。しかし、そのカギを握っているのははたして日本側なのだろうか。
日産自動車がどんなに頑張っても、結局のところは43%もの株を握られているルノー次第と言っても良いのかもしれない。
特捜本部も、自白なしで本当に有罪に持ち込めるのか。日産にとって、本当の正念場はこれからやってくる。
(一部敬称略)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら