京急カラー「ウソ電」、なぜ全国に増殖したか 赤と「くりぃむ」で空港線PR、背景には危機感
「首都圏では京急空港線の利便性を認知してもらっているが、地方に行くとやはり『羽田に着いたらモノレール』のイメージが強い」――。電車に電車のラッピングを施す、といういわば前衛的な試みについて、京急電鉄営業企画課の八巻佑一さんは意図を説明する。
意外なことに八巻さんは「最初から全国でシリーズ展開するぞ、と決まっていたわけでない」と明かす。「大阪モノレールでのラッピングが、鉄道ファンの間で『ウソ電』と話題になっただけでなく、沿線の方もSNSで拡散してくれた。思いのほか反響があったので、調子に乗って『全国でやってしまおう』となった」。
急ピッチで各地に展開したのは「本当は月1回のように小出しにしたほうが出張の楽しみが増えるけど、広告枠を売っていないところは走らせられないので、空きがあるとすぐに押さえた」(八巻さん)ためだ。
ただ目立てばよい、というわけにもいかず、場所によっては屋外広告物条例などの“大人の事情”をめぐる調整の苦労があった。「赤と白で派手なので『もっと色味を落とせ』とか、路面電車は自動車と併走するので『長い文章で注意を引き過ぎると脇見運転を誘発する』といった規制もある」(同)という。
空港線PRなのになぜ「2100形」?
モデルとされる2100形が空港線を走るのは一部の運用のみ。なぜ空港線のPRに採用したのか。八巻さんは「京急の看板はやはり2100形。全国で展開しているシリーズ、ということでイメージがチグハグにならないよう、当初の大阪モノレールでのデザインを踏襲した」と話す。
ことでんの場合も熱心なファンからは「なぜ旧1000形の塗装にしないのか」といった不満の声が聞かれたようだ。
これについては京急の広報担当者が「リバイバル塗装となるとわれわれがアピールしたいこととずれてしまう」と説明する。あくまでも「全面広告」との位置づけだ。赤の色合いも京急車両のものよりは、羽田アクセスの広告図案で使う色に近い。もっとも当の八巻さんは「結果的に話題になってよかった」とそれほど気にしていないようだ。
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