京急カラー「ウソ電」、なぜ全国に増殖したか 赤と「くりぃむ」で空港線PR、背景には危機感

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こうして各地で話題作りを進めながら、11月18日に羽田空港国内線ターミナル駅の開業20周年を迎えた。空港内で開催した記念式典には、京急電鉄の原田一之社長と同駅の齊藤功司駅長に加え、くりぃむしちゅーの上田晋也さんと有田哲平さんが駅員の制服姿で登場した。

羽田空港国内線ターミナル駅の開業20周年記念式典(記者撮影)
記念式典にはくりぃむしちゅーの2人が駅員の制服姿で参加した(記者撮影)

原田社長は式典のあいさつのなかで「京急の悲願だった羽田空港への乗り入れを果たして20年。品川、羽田を玄関口にして国内外の多くの人が集う沿線を目指している。羽田アクセスの利便性向上はもちろん、ホテルや商業施設など羽田空港がますます元気になるような事業を展開していく」との方針を示した。

くりぃむしちゅーは2006年から空港線のPRキャラクターを務める。「テツandトモ」、長井秀和さんに続く3代目だ。お笑い芸人を起用したのは「老若男女いろんな人に乗ってもらうために、みんなに愛されるキャラクターがいい」(原田社長)との理由で、「HKT48」がイメージキャラクターの東京モノレールとは別路線をとってきた。

開業20周年を記念して2019年2月末まで、品川と京急蒲田、国内線ターミナルの3駅でくりぃむしちゅーの姿を装飾した駅名看板を掲げる。プレゼントキャンペーンも実施し、特賞は2人の直筆サインが入った国内線ターミナルの駅名看板の実物だ。

足元好調も「あぐらをかいていられない」

京急が中期経営計画で品川、三浦半島とともに「エリア戦略の重点テーマ」と位置づける羽田空港をめぐっては、今後も環境の大きな変化が予想される。

足元をみると、国内線・国際線両ターミナル駅の2017年度の1日平均乗降人員は合わせて11万6552人と前年比5.2%増えた。訪日外国人観光客の増加など旺盛な航空需要を背景として拡大傾向が続いている。

利用者数は2020年の東京五輪開催に向けてさらに弾みが付きそうだ。国土交通省は飛行経路の変更などにより、深夜・早朝時間帯以外の国際線について発着回数を最大で年間約3万9000回増やす検討をしており、航空旅客数が増加すれば同社にとって追い風になる。将来は国内線ターミナル駅に引き込み線を新設して輸送力を増強する計画もある。

一方、JR東日本が都心から3つのルートで結ぶ「羽田空港アクセス線構想」の推進を掲げるなど、京急社内には「あぐらをかいていられない」という緊張感がある。京急がラッピング車両を各地で立て続けに投入した背景には、空港線の利用が好調な今のうちから、日本各地で「羽田に着いたら京急」のイメージを刷り込んでおきたいという狙いが透けて見える。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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