京急カラー「ウソ電」、なぜ全国に増殖したか 赤と「くりぃむ」で空港線PR、背景には危機感
出発式の目玉は「師弟の再会」だ。2003年のゆいレール開業前、運転士のうち10人ほどが約1年間、京急電鉄の動力車操縦者養成所で教習を受けた縁から花束や記念品の贈呈が式次第に盛り込まれた。
ラッピングを施したゆいレールの1000形(1編成2両)は車端部が丸みを帯びている。早くもモデルの京急2100形とは見た目の乖離が出てきたが、前面の上部にわざわざ黄色で「前照灯」を描くこだわりもみせた。
その後、京急デザインは九州の路面電車へ進出。ゆいレールでのデビューと同じ2月中に長崎電気軌道と鹿児島市電に登場した。
4月には高松琴平電気鉄道(ことでん)でラッピング車両の運行を開始。このときは京急から櫻井和秀運輸営業部⻑や検修課の社員らが出席し、仏生山駅で車両のお披露目と出発式を開催した。京急で活躍した「(旧)1000形」がことでんに譲渡され「1080形」として走り続けていることにちなんだ企画だ。
導入当時を知ることでんの関係者は出発式で「(譲渡されるまでは)冷房⾞両が少なかったのでお客さんに⼤変喜ばれた」との思い出話を披露。京急の櫻井部⻑は「これを機に四国の皆さまに京急のことを知ってもらいたい」と力を込めた。
ラッピングを施された1080形は、元京急車両にもかかわらず、現在の京急2100形のデザインをモデルに仕上げたことで違和感が際立っている。前照灯は中央にある本物1つに加えて、両端にも黄色で描き足したため計3つもある。色合いも本来の赤より鮮やかに見え、「復刻」を期待していた鉄道ファンの悲鳴が聞こえてくるようだ。
全国各地で「京急ラッピング」
このあとも京急ラッピングの展開は続き、広島電鉄や多摩都市モノレールのほか、新千歳空港と札幌市内を結ぶ北都交通の空港連絡バスで北海道進出を果たした。多摩モノレールの場合は、広告に使えるスペースの都合上、窓の下の一部分のみとなっている。
京急デザインは横浜の海にまで現れた。横浜駅東口と赤レンガ倉庫や山下公園を結ぶ「シーバス」は海上から眺める景色が観光客に人気の交通手段だ。京急の電車を思わせる、赤とクリーム色の船体に「KEIKYU」のロゴをラッピング。随所を飾るのは京急電鉄のマスコットキャラクター「けいきゅん」のイラストだ。
ただし、シーバスに京急ラッピングを施したのは2月に迎えた京急創立120周年と、2019年秋に京急グループの本社機能がみなとみらい地区へ移転することをアピールするためのもので、空港アクセスの「シリーズ物」とは直接関係はない。
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