情報公開制度は誰もが使える身近な「武器」だ 毎日新聞記者が目指す「協働」ジャーナリズム
ただ、別の観点もあります。確かにイギリスの新聞記者は日本よりも制度を活用しています。情報公開がメールですぐに簡単にできてしまうからです。逆にいうと、自分で取材に行く代わりに制度を使ってお手軽に済ませているケースがある。
背景には、イギリスでは日本に比べて新聞社の経営がより厳しくなっていて、記者の数がどんどん減ってしまっていることがありました。
オックスフォードの地元紙記者は「時間も人もないからどうしても情報公開請求で済ませてしまう。多くの時間は会社から電話をかけているか、メールを打っているかどちらかだ。本当はちゃんと人に会って話を聞く取材をしなければいけないのに、なかなかできない」と言っていました。
新聞は情報の「目利き」で生き残る
――『権力に迫る「調査報道」』(旬報社)のなかで、「新聞の役割を今の『速さ』ではなく、『深さとか幅広さ』にシフトしないと、メディアとしても生き残れないんじゃないか」と発言しています。情報公開請求の手法はメディアの将来に資するものですか。
日本の多くの新聞社の基本的な取材報道の仕組みはおそらく戦前から変わっていないのではないかと思います。速報から時間をかけて深掘りした取材まであらゆることを一手に担い、メディアの代表としていられた時代の仕組みのままだと思うのです。
しかし、インターネットの登場で状況は一変しました。個人が発信できるようになり、世の中に流れる情報は爆発的に増えました。そのなかから本当に価値のあるものはなにか、みんなが知らなければいけないニュースは何か、ということを情報の「目利き」として示していくことが、新聞が生き残っていく道ではないかと思っています。
その際、情報公開制度、あるいは公開情報を使うことは1つの有力な手法だと思っています。全体像をつかみ、起きていることの背景を探るのに適しているからです。また、人の情報源だけに頼っていると、どこかでバイアスがかかっている可能性が排除できない。
そのバイアスを中和するために、その人が言ったことの裏取りを情報公開してみるという方法もある。公開情報とそうではない情報と組み合わせることで、世の中で今起きていることを、より歪みの少ない形で示せると思っています。
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