情報公開制度は誰もが使える身近な「武器」だ 毎日新聞記者が目指す「協働」ジャーナリズム
何かを問題視して調べるときももちろん使えますが、先の吉田さんのように自分の興味関心に沿った調べ方にも実は使える。問題追及型である必要はなくて、もっとカジュアルに使ってよいものだと思うのです。
文書の名前を正確に書かなくても、「〇〇がわかる文書や記録」といった形で請求すれば、役所のほうでそれに該当する公文書を探して開示してくれることが多いです。役所の決まりや文書の種類を詳しく知らないとできないということはありません。
――情報公開制度の課題はどこにありますか。
国の機関の場合は、特に開示を引き延ばされるケースが多い。確かに多くの公文書を請求するほど準備が大変なのはわかります。すべてにおいて悪意を持って開示を遅らせているとは思いません。もっとシステマティックに文書を電子化するなどして解決をしていかないといけないでしょう。
役所の裁量による「黒塗り」を憂慮
また、不開示にしてよいという例外規定が幅広く、官庁側の裁量で解釈できてしまうことがあります。今年7月に、総務省の研究会が議事の速記録を作成していながら、私文書扱いにして開示しなかったことを報じました。その後、一転して公文書と認めて開示はしましたが、発言の多くが黒塗りでした。
私は黒塗りのない速記録を入手していますが、それを読むと各分野の専門家である研究会のメンバーが地方議会の制度について意見を述べているだけです。誰かのプライバシーに触れるとか、スパイに知られたら困るといった話をしているわけではない。本来は黒塗りにする必要がない文書のはずです。
――海外のメディアは情報公開制度をうまく使いこなしているのでしょうか。
2016年にロイタージャーナリズム研究所に研究員として留学し、日本とイギリスの情報公開制度を使った調査報道の比較をしました。ジャーナリストや市民運動家は日本よりも活発に制度を使っていました。行政の情報管理担当者もかなり情報公開法(情報自由法)の理念を理解していました。どこまで制度を使えるのかをわかっている人の層が厚いと感じました。
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