サウジ記者殺害「ありえない幕引き」の代償

CIAはムハンマド皇太子はクロと断定したが

CIAによって、カショギ氏殺害に関与したと断定されたサウジアラビアのムハンマド皇太子(写真:Bandar Algaloud/Courtesy of Saudi Royal Court/ロイター)

トルコ・イスタンブールで起きたサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏の殺害事件で、「アメリカ中央情報局(CIA)はムハンマド皇太子の関与を断定した」とアメリカのメディアが報じた。実権を握るムハンマド皇太子が関与したと当初から疑惑視されてきたが、CIAが断定したことで事件は発生(10月2日)以来、1カ月半余りでアメリカ政府が皇太子本人の関与を認めるかどうかのヤマ場にようやく差し掛かった。

アメリカのドナルド・トランプ大統領は当初から、対イランなど中東戦略の要であるサウジとの同盟関係を優先させる考えを強調してきた。大統領は20日に声明を出し、「ムハンマド皇太子が事件を把握していた可能性は十分にある」と指摘したが、決定的な証拠がないのを理由に「カショギ氏の殺害にまつわる全ての真実を知ることはないだろう。サウジは揺るぎないパートナーだ」と述べ、事実よりも実利を優先させて事態を乗り切る方針を改めて示した。

これに対し、アメリカのワシントン・ポスト紙の編集者はツイッターで、「トランプ大統領の声明はうそばかりで、自国の情報機関を明白に無視するものだ」と批判。ただ、アメリカ大統領選へのロシア介入疑惑で、トランプ大統領とCIAの関係はよくない。トランプ大統領にとっては同盟関係や巨額の兵器契約、ビジネス権益の方が重要であることは周知の事実だが、指導者としての信頼はさらに低下しそうだ。

トランプ大統領が皇太子を擁護するワケ

簡単に事件を振り返ってみよう。もともとサウジ政府顧問を務めるなど体制内の人間だったカショギ氏が、ムハンマド皇太子の独裁化を危惧して批判。これを裏切りであり、体制の存続にとって危険と判断したサウジ指導部によって暗殺計画が練られた可能性が高い。

カショギ氏の総領事館訪問に合わせて暗殺団15人が送り込まれ、総領事館に入った直後に殺害されたようだ。遺体は解体後に酸で溶かされたとの情報もあり、見つかっていない。殺害後に「ボスに伝えて」とムハンマド皇太子に任務終了を報告したとみられる音声記録も浮上した。

アメリカメディアによると、CIAは、トルコから提供されたカショギ氏殺害時の音声記録のほか、ムハンマド皇太子の弟のハリド王子が、総領事館を訪れるようカショギ氏に求めた通話記録などを証拠に、皇太子が殺害を指示したと総合的に判断した。

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