《介護・医療危機》ケアマネの自立認めぬ厚労省、”安すぎる報酬”の狙い

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介護が必要な中でも「軽度」と呼ばれる要介護1または2だと、ケアマネジャーの報酬である居宅介護支援費は、1カ月当たり1000単位(1単位10円の場合で1万円)。中重度の要介護3~5の場合は1300単位に設定されている(ケアプランの受け持ちが40件未満の場合)。ところが40件以上になると、すべてのプランに対する報酬が一律4割減となるため、事実上40件以上を受け持つことは不可能だ。

軽度および中重度の割合が半々で、39件受け持った場合、1カ月の介護報酬は4万4850単位(1単位10円の場合で44万8500円)。ここから事務所経費を差し引かなければならない。現実的には39件持つことは困難で、厚労省の調べではケアマネジャー1人当たり26・9件。人件費も賄えないので、多くの事業所は単独では成り立たず、9割近くがデイサービス(通所介護)や訪問介護などとの併設型になっている。

こうしたいびつな収支構造は、ケアマネジャーに対する厚労省の姿勢と深い関係がある。介護保険制度スタート時、一斉に参入した事業者は、居宅介護支援事業所も併せて設置し、資格を取得したばかりのケアマネジャーの獲得に乗り出した。そして、ケアマネジャーを通じてケアプランに自社の介護サービスを組み込ませることで、高齢者の囲い込みを進めようとしたのである。

ところが、介護サービス事業所が全国に行き渡ると、厚労省は一転して介護サービスの「適正化」に乗り出した。その際に、適正化のターゲットにされたのが、ケアマネジャーだった。自社サービスへの利益誘導を図ったり、不要なサービスをケアプランに組み込んでいる事例が目立つとして、ケアマネジャーに対する締め付けを強化したのだ。

ケアマネジャーへの管理強化は2003年度の介護報酬改定から始まった。数をこなしても採算が合わない一方で、ケアマネジャーが最低でも月に1回、利用者宅を訪問していない場合には、介護報酬の3割を削減する仕組みを導入した。その反面、何度も自宅を訪れた場合に対する報酬上の評価は何もなかった。

そして06年度改定では、訪問未実施が2カ月に及んだ場合の削減幅を5割に拡大。同時に、ケアマネジャー1人の標準担当件数を35件に設定。40件以上の場合は報酬の4割を削減する事実上のペナルティを導入した。その一方で、新たに「予防給付」と呼ばれる制度を導入し、要介護状態にならないための努力が必要な「要支援1」「要支援2」に区分された人の介護予防ケアプラン作成業務は、原則として市町村の地域包括支援センターが行うこととなった。言うなれば、ケアマネジャーから、ケアプランの引き剥がしを行ったのである。また、06年4月からは、5年ごとのケアマネ資格更新制や6年ごとの居宅介護支援事業所の指定更新制も導入された。

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