《介護・医療危機》ケアマネの自立認めぬ厚労省、”安すぎる報酬”の狙い

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同じ時期、自治体による給付費の「適正化」を通じて、同居家族がいる場合の生活援助(買い物や炊事、掃除など)の多くが不適切とされた。そして、不適切なケアプランに基づくサービスの実施を理由に、介護報酬の返還命令も相次いだ。こうした中で、ケアマネジャーが利用計画に生活援助を盛り込むことを自粛する風潮が全国各地に広がった。

「ケアマネジャーへの締め付けを通じて介護サービスの利用を抑制させる。ひいては行政の言いなりになるケアマネジャーを作ることが『適正化』の真の狙いだった」と服部万里子・立教大学教授は指摘する。

管理強化が進む中でケアマネを辞める人も

管理強化が進む中で、「実地指導や監査で指摘されるのを恐れるあまり、ケアマネジャーは先回りして自粛することが多くなった」(「ケアマネジメントについて考える会」の新組織設立準備委員でケアマネジャーの本宮晶子さん)。そして、「市町村に必要性を説明しても、『あれも駄目』『これも駄目』と言われて、ケアプランに組み込むことができないことも多くなった。ケアマネジャーの仕事は様変わりし、退職していく人が増えていった」(本宮さん)。

00年度の介護保険制度スタート時から、独立系の居宅介護支援事業所を営んでいる本宮さんは、「当時からのケアマネジャーは大方が仕事を辞めており、いまや面識がない人ばかり。特に06年度の報酬改定以降はその傾向が目立つ」と語る。

介護予防のケアプラン作成業務を地域包括支援センターに移したことで、要支援1、2の高齢者は、ケアマネジャーを選ぶ権利を喪失した。これは、介護保険制度の理念に掲げられた「サービス選択の自由」を事実上否定するものにほかならない。

「ケアマネジメントについて考える会」は今年8月、厚労省に「政策提言」を提出。その中で、ケアマネジメントに対する正当な評価と政策スタンスの転換を要請した。

介護保険制度がスタートして8年が過ぎた現在、管理の発想は強まる一方だ。しかし、今、最も求められているのは、介護を担う職種への正当な評価と対話ではなかろうか。

(週刊東洋経済)

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