日産に追放された「辣腕経営者」ゴーンの功罪 危機から復活遂げたが社内には不満も募った

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ゴーンはこの失態の責任を、当時ナンバー2だった最高執行責任者(COO)の志賀俊之氏に押し付け、COOを退任させた。自分は逃げた。ゴーンは11月1日の記者会見で「懲罰人事ではない。若返りで実行力を加速させる」と詭弁を弄した。

ゴーンはよく「ストレッチ」という言葉を使った。高い目標を掲げてチャレンジしろという意味である。これ自体悪いことではないが、挑戦してもすぐに成果が出ないと粛清人事が待ち受けていた。志賀氏だけ限らず、ゴーンは自身の戦略ミスを下に押し付ける傾向が強まっていた。ゴーンは独裁者になってしまった。独裁者というよりも「裸の王様」と言ったほうが適切かもしれない。

側近集団も見て見ぬふりをしてきたのではないか

ゴーンが独裁者となり、公私混同で会社のお金を使ったことは言語道断だが、それを見て見ぬふりをしてきた側近や一部役員にも道義的な責任があるのではないか。一部経営陣は、ゴーンに忠誠を誓い、今の地位を得ている。ゴーンに気に入られた役員・幹部は失態を犯しても擁護される傾向が強まっていた。こうした側近集団は、ゴーンが公私混同していたことに以前から気づいていて、見て見ぬふりをしていたのではないか。

ゴーンに限らず、一部外国人社員が、大した実績も出していないうえ、役員でもないのに、役員同等の福利厚生を要求するなどしていた。「ゴーンの真似をしている」といった皮肉が社内からは聞かれた。ゴーンと一緒に逮捕されたグレッグ・ケリー氏は日産米国法人採用で、法務・人事を担当していたが、ゴーンに気に入られ、代表取締役の地位を得た。

しかし、最近のケリー氏は代表取締役でありながら、日産に出社することはほとんどなかったという。「米国で牧場経営をしたり、ゴーンと共謀して会社の資金を流用してプライベートカンパニーをつくったりしていた。弁護士の資格をもつケリーはゴーンに悪知恵を授けることにたけ、そこを評価されていた」(日産関係者)という。このケリーのほかにもゴーンは「日産の仕事をせずにゴーンの資産運用などプライベート面で対応する外資系証券会社の関係者への顧問料を日産の経費から支払っていた」(同)という。

一方で、実績があってもゴーンへのゴマすりが下手な人、率直に意見を言う日本人は徹底的に排除する傾向が強まった。このため、日産社内ではゴーン支配への不満が募った。

今回、日産社内の内部通報によってゴーンの不正が発覚した。日産は時間をかけて社内調査を進めていた。そして、検察に情報提供してゴーンの逮捕につなげた。一部報道では、日産と検察との間で司法取引があったとされる。用意周到に、「ゴーン追放」を日産の現経営トップが画策したフシがある。

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