日産・ルノー「経営統合」問題の深過ぎる真相 日産社長は合併報道否定でも体制変更に含み
日産自動車が米国事業で苦しんでいる。5月14日に発表した2018年3月期決算は、売上高が11兆9512億円(前期比2%増)と増収の一方、営業利益は5748億円(同22.6%減)と大幅減益だった。国内の完成検査問題の影響や稼ぎ頭である米国事業の採算性悪化が響いた。
「(販売店の値引き原資となる)インセンティブ(販売奨励金)増によって販売台数を増加させて、必要以上に収益性を悪化させたくない」。西川廣人社長はこう述べて、米国で取り組むインセンティブ抑制を続ける考えを改めて強調。その結果、2018年秋に主力セダン「アルティマ」の刷新を控える中でも、米国では販売台数の減少を予想する。
為替想定の円高への見直しや開発費増が利益を下押しするため、2019年3月期は売上高12兆円(前期比0.4%増)、営業利益5400億円(同6%減)を見込む。3期連続減益の厳しい予想だ。しかし、会見では決算の内容以上に、親会社である仏ルノーとの提携関係の行方に報道陣の関心が集まり、質疑応答時間の半分が費やされたのだった。
日産とルノーの自立性は犠牲にしない
「合併の話をしているという事実は全くない」。西川社長は、3月に「日産とルノーが合併交渉」と海外メディアで報じられたことについて問われると、強い口調で明確に否定した。3月には他にも「仏政府保有のルノー株を日産が買い取り検討」と報道されたほか、4月には日産会長とルノーCEOを兼務するカルロス・ゴーン氏自身が国内メディアのインタビューに、相互出資している現在の資本関係を含めて体制の見直しを検討する方針を表明した。日産傘下の三菱自動車を含むアライアンス(企業連合)の枠組みに、ここにきて変化の兆候が見られるのだ。
西川社長はアライアンスについて、「次の経営陣に代わっても維持していける仕組みを作らないといけない。1~2カ月で答えを出す話ではないが、できるだけ早いタイミングで具体的に検討していきたい」との意向を明らかにした。その上で、「自立性と効率性との両立を犠牲にして次の形にすることは考えていない」と述べた。ただ、具体的な枠組みについては「個別の議論をここでするのは妥当ではない」と明言を避けた。
日産とルノーの関係見直しに向けた動きの背景には、ルノーの筆頭株主である仏政府が日産との関係を後戻りできない「不可逆的なもの」にするよう、圧力を再び強めていることがある。両社の関係は、2兆円の有利子負債を抱えて倒産寸前だった日産をルノーが救済する形で傘下に収めた1999年に始まる。
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