日産に追放された「辣腕経営者」ゴーンの功罪 危機から復活遂げたが社内には不満も募った
仮にそうだとすれば、日産の現経営陣がゴーンを追い出したかった理由は、仏政府の意向を受けてゴーンが進めていたルノーによる日産支配の強化策を排除するためだろう。ゴーンは日産と三菱自動車の会長のほか、ルノーCEOも兼務している。ルノーCEOの任期は2018年で切れる予定だったが、2022年までに延長された。ルノーの筆頭株主が仏政府であり、仏政府がゴーンに留任の条件を突きつけた。
以上の3つだったという。
ゴーンはこの3条件を呑んだ。中でも仏政府が重視するのは条件①だ。ルノーの経営体力は落ちており、日産からの配当金や技術供与がなければやっていけない企業体質になっている。20年前の提携時とは立場が逆転した。日産にとってはルノーの存在が「お荷物」になりつつ始めていた。仏政府もそのことは重々承知しており、日産に逃げられないために、ゴーンに条件①を突きつけた。
最近のゴーンの仕事の中心は、三菱自動車を含めた「3社アライアンス」の新しい形をつくることであり、言い方を換えれば、ルノーの日産に対する支配を強める新たな経営スキームをつくることでもあった。その新たなスキームが早ければ2018年度中に出来上がる動きが進んでいた。
ルノー支配に対する抵抗か
西川氏はルノーの支配が強まることを嫌った。西川氏だけではなく、国内の販売会社や部品を供給する取引先からも「これ以上、ルノーに利益を収奪されることは勘弁してもらいたい」(販売店関係者)との声が出ていた。こうした状況を勘案して、ルノー支配を強めようとしたゴーンの排除に動いた可能性が高い。
日産も三菱も近く開かれる取締役会でゴーンを解任する予定だ。解任後、さらなる課題も浮上するだろう。最大の課題は、日産とルノーの提携関係がどう動くかだ。提携交渉にかかわった日産OBの1人は「日産はルノーとの提携解消に動くのではないか」と見る。今がルノーの呪縛から逃れる絶好の機会だからだ。ルノーが持つ日産株は一時的に、資金力が豊富な外資のファンドに流れる可能性もあるという。
しかし、仏政府は日産を逃がしたくはない。日産と仏政府の摩擦も起こるだろう。雇用や税収で大きな影響がある基幹産業といえる日本の自動車メーカーの外資支配が強まる流れを、これまで無策で見過ごしてきた経済産業省も今回は黙ってはいないだろう。今後、ゴーン不在の日産ルノーの提携の行方は、日仏両政府も入った交渉になる可能性がある。(一部敬称略)
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