「WeWork」のオフィス改革は何がスゴいのか 日本人には「課題設定スキル」が足りない

拡大
縮小

空間、光、アイデア、ネットワーク。あらゆるものを最適化し、周りの人と共有できる環境を提供する。それによって働く人をよりオープンな気持ちにさせる。そういった気持ちや心を開放する感覚が重要だと思っています。

WeWorkのコミュニティエリアでは、毎週月曜日には週ごとにメニューが変わる朝ごはんが振る舞われるイベントや、平日の晩はサルサを踊るワークショップが行われることもあれば、ブロックチェーンや働き方の未来について語る真剣なビジネスセッションもあります。いろんな人に響く幅広いジャンルのイベントを行うことで、そこに集う人を増やし、会話や交流が生まれる仕掛けをつくっているんです。

今では、WeWorkに入居する企業やメンバー同士でランチをしたり、業務提携やサービス利用も生まれています。私たちがマッチングしなくても自発的にこういう化学変化が生まれるのが、理想としている姿ですね。

――日本で拠点をオープンして、特に印象的だったことは何でしたか?

(撮影:桑原美樹)

日本人は、思ったよりもシャイじゃないということですね(笑)。いろんな人に言われるんですよ、「日本人ってシャイでしょう?」って。

でも、WeWorkの初拠点をオープンした初日、その固定概念は打ち消されました。

夕方6時頃にコミュニティエリアへ行ってみると、ビールやコーヒー片手にたくさんの人が集まり、ものすごく賑わっていたのです。でもよく考えてみたら、金曜日の夜って、新橋の飲み屋街では隣に居合わせた人同士が仲良くなって盛り上がったりしていますよね。日本にも、そういう土壌は充分にあるんだなと。

ただ日本人の多くは、今まで「職場では、ちゃんとしなければいけない」という暗黙のルールに強くしばられていたのではないでしょうか。年功序列の雰囲気、その会社独自の不文律、礼儀のような“オフィスにはびこる暗黙のルール”から開放されることによって、想いやアイデアが活発にキャッチボールされるようになったのだと思います。

「Unlock」が個人のポテンシャルを引き出すカギ

――国をあげて取り組んでいる働き方改革も、急速に進んでいるとは思えない状況です。そのような現状をWeWorkは今後どのように変えていきますか?

実は今、ベンチャー企業ではなく大企業の入居が最も伸びているんです。大企業の場合、WeWorkに入っているのは、一部の部署であるケースが多いです。それでも、社内ミーティングでは他部署の社員がWeWorkへ足を運びたがる、ここで会議をすると生産性が上がる、採用面接をすると決定率が上がる、などの声を日本でもよく聞くんです。

そうやって、企業の意識が変われば従業員の考えも変わります。すると、社会は大きく動いていく。これまでの働き方とは違うことをしたい、それによって新しい何かを生み出したいという課題感は大企業こそ感じているはず。日本でもそこから大きな変化を起こしていけると思います。

――今後「働き方」が変わった時、日本はどんな世の中になるのでしょうか。

「いつどこで働く」という概念すらなくなり、自宅に一番近いWeWorkに半日だけ行って仕事をしようなど、もう少し柔らかい働き方が生まれるのではないかと思います。人それぞれ自分に合う働き方や、働く環境は違います。一人ひとりが自分にマッチした働き方ができるようになれば、自分のやっていることにもっと生きがいを感じられるようになるはずです。

今は会社やルールにとらわれて自分を制限している人が多いと思いますが、それを開放――英語では「Unlock」というのですが――「Unlock」することでいろんなポテンシャルが開けていくと思います。

――なるほど。最後に、髙橋さんの今後の展望を教えてください。

世界中のWeWorkメンバーをつないでいきたいですね。11月には横浜のオーシャンゲートみなとみらい拠点をオープンし、年内には大阪、福岡にそれぞれ拠点をオープンさせるので、日本のいたるところにWeWorkがあって、そこへいけばすぐコミュニティに参加できる状態をつくりたい。そしてそれを海外でも広げられるようにし、同じ思いを持つ人同士が、簡単につながれる世の中にしたいと思っています。

(取材・文/石川香苗子 撮影/桑原美樹)

20’s typeの関連記事
WeWork髙橋正巳が教える、生産性を劇的に高めるために必要な4つのルール
【ひろゆき】まだ人気企業で働きたいとか言ってるの? “ロクでもない未来”を生きることになる20代に決定的に欠けている視点
ライザップ創業社長・瀬戸健が「この世に失敗は存在しない」と断言する理由
会社に「文句を言える人」の特徴って? 元Google人事に聞く、疲れない働き方

『20's type』編集部

『20's type』は、キャリアデザインセンターが運営するWebマガジン。2018年4月より『営業type』からサイト名をリニューアル。新時代を生きる20代若手ビジネスパーソンの「働く力」を育むために役立つ情報を発信している。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
猛追のペイペイ、楽天経済圏に迫る「首位陥落」の現実味
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
ホンダディーラー「2000店維持」が簡単でない事情
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT