「WeWork」のオフィス改革は何がスゴいのか 日本人には「課題設定スキル」が足りない
もっと自由に、自分のスキルや想いが今の世の中にどう必要とされているかを考え直し、解決すべき課題を設定することが必要です。そのためには「決まった場所に、決まった時間に出勤して、いつも同じ人と決められた仕事をする」という従来の働き方から脱却して、いろんな人と意見を交わし、発想やクリエイティビティを開放すべきだと思います。
――「働き方改革」というと、まずは残業時間の削減など、制度改革に取り組む企業が多いのが現状ですが、髙橋さんはそれをどう思われますか。
もちろん制度も重要ですが、これから労働人口がどんどん減少していくなかでGDPを伸ばし続けるための鍵は「生産性の向上」です。そして生産性は、仕事に対する思い入れやパッションと強くリンクしています。本当に好きなことや情熱を持ってできることなら、高いクリエイティビティが生まれ、情報収集も活発になる。すると、個人の生産性は大きく向上していくはずです。
――確かに、好きなことにのめり込めば、高い成果は上げられると思います。一方で、熱中するあまりタスクが膨らんで、長時間労働になってしまう懸念はありませんか?
現代における生産性の向上とは、たくさんのタスクを短時間でこなすことではありません。ものごとをシンプルにして、価値あるものをたった一つ生み出すだけでいい。
最近、商品ラインナップを削ぎ落として一つの商品で勝負しているメーカーや、メニューが一つしかない飲食店が爆発的にヒットすることって多いですよね。
そんな風に、今、一世を風靡しているサービスやプロダクトって、ボタン一つで何かをがらりと変えてくれるようなシンプルなもの。それって究極的にイノベーティブだと思うんです。
たくさんの作業をこなして複雑にする必要はなくて、シンプルにするためにいろんな工夫をしたり、課題を解決していく過程で、どんどん生産性も上がっていくし、少ない時間で大きな価値を生むことができるようになるのだと考えています。
AIは、人間の想いやパッションを効率化してくれない
――WeWorkでは、「日本人の働き方」の課題をどのように解決しようと思っていますか?
私たちが行っているのは、ピープルビジネスです。これからはAIやロボティクスが進化し、いつシンギュラリティが起こってもおかしくない時代。テクノロジーの力で徹底的に効率化が図れるところと、それではまかないきれないところの二極化が進みます。
その中で重要になってくるのは、テクノロジーでは効率化できない人の想いやパッションをすくい上げ、つなげる役割。そこを担うのが私たちです。全く違う業界の人たちが意見を交換し、刺激を得て、自由な発想やビジネスが生まれる環境をつくること、そして一人ひとりがやりがいや生きがいを持てる世の中を築くこと。それが私たちのミッションだと考えています。