深刻な景気後退示す米株価、GM、シティの2大経営危機が重荷
大和総研の調べによれば、米企業の収益(S&P500種ベース、除く金融)は、10~12月期から2四半期連続で減益に転じるというのがアナリストコンセンサス。10~12月期は前年同期比1・4%減、09年1~3月期は同0・3%減を見込む。
それでも、今のところは株式相場のさらなる底割れを予想する声は、さほど聞こえてこない。その理由の一つがオバマ次期大統領就任後の大規模な景気浮揚策実施への期待が下支えになっていることだ。大和総研の成瀬順也シニアストラテジストは「年内に景気対策が発動されれば、1万ドル回復も見込める」と読む。次期大統領がGM救済に前向きなのも、下値不安を和らげているようだ。
企業収益は09年4~6月期に再び増益へと転じる見通し。エコノミストコンセンサスによると、米国経済も同期には4四半期ぶりのプラス成長へと浮上する(いずれも大和総研調べ)。「株価は景気の底打ちに6~9カ月程度先行する」という経験則に従えば、株式相場は「4四半期連続のマイナス成長まで織り込んだ」と見ることも可能だ。
つまり、株価の深押し回避はあくまでも09年後半の立ち直りを想定したもの。「ディープリセッション」突入ならばそうした前提も揺らぐ。
目下、投資家の多くは慎重姿勢にある。S&P500種株価指数算出対象企業の08年利益のアナリスト予想を基にはじき出した株価収益率(PER)は12倍台前半。09年予想ベースでは9倍台と1ケタに低下する。それでも積極的な買い手が見当たらないのは、「株価は景気の最悪期まで完全に織り込んだ」との判断に確信が持てない証左だ。
日本株相場は10月の急落局面で「逆張り」志向の個人投資家が大挙して買い出動したが、米国の状況は異なる。同国の個人投資家協会の調査では、相場に対する弱気派が全体の57%に達し、強気派(24%)を大幅に上回る(11月19日時点)。
日興コーディアル証券の河田剛シニアストラテジストは「株式運用のパフォーマンスは当面、低い水準にとどまるのかもしれない」と話す。
いったん逃げ出したリスクマネーが簡単に舞い戻るとは思えない。民主党政権誕生も長期的には逆風になりうる。富裕層をターゲットに見据えたキャピタルゲイン課税の増税実施の可能性が否定できないためだ。最も大きなリスクファクターはドル崩落の恐怖。野放図な景気対策は巨額の財政赤字という禍根を残す。
1929年の世界恐慌後、ニューヨークダウが急落前の水準を取り戻すのに要したのは実に25年。今回も07年の1万4000ドル台奪回までの道程は険しい。混乱が収まり「平時」を迎えたとき、大盤振る舞いのツケは相場に重くのしかかる。
(週刊東洋経済)
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