日本の物価を安定化し経済を活性化する方策 浜田宏一×渡辺努×安斎隆:鼎談
浜田: 私はAIの問題は長期的にかなり重要だと思っています。今までは技術が進歩すれば、それを使う労働者の仕事が容易になって生産性が上がると思われた。しかし、現在はUberのライドシェアの普及でタクシー運転手を減らす、といった話になっている。孫正義さんのような人なら、Uberに出資すれば自分の富を増やすことができる。AIに淘汰されるのではなくてAIを支配することができればよい。もちろん、だれでもイニシアチブを取れるわけではないですが。
大企業とベンチャー企業の協働はよいこと
渡辺:学生の世界が変わってきているとお話ししましたが、企業の世界もAIやICT(情報通信技術)の分野で、変化が出てきています。特にフィンテックなどは、大きな銀行と小さなベンチャー企業が協働しながら進めています。これはなかなかいい形だと思っています。
時代に取り残されてもはや価値を生み出すことのできないゾンビ企業が増えていると言われますが、しかしゾンビだからといってすぐに潰してしまうわけにはいきません。そこにとどまらざるをえない労働者も少なくない。しかし、外側にベンチャーが存在して、そこが成長していけば、お互いにメリットを享受できます。ベンチャーを起業するような若い人にも資金がついて、大企業の人材も活用できます。
浜田:ぼくは子供の頃は作曲が趣味で、童謡を作ったんです。多様な発想をするためには、音楽や美術など情操教育も重要だと思います。現在の東大には美学はありますけど、芸術はない。でも、イェール大学では、篤志家がミュージックスクールに寄付してくれたこともあって、今は学費が無償になって、トップ級の音楽家が集まってくる。僕が昔イェールに入っていちばんうれしかったことは、音楽学校に聴講生で忍び込んで、作曲のコースに出席できたことです。
やはり、読み書きそろばんだけじゃないシステムが必要なんじゃないか。僕自身は古い博覧強記教育を受けて成功してきた人間なので、批判しても説得力がないかもしれません。世の教育ママに納得してもらえるかはわからない。でも、今までは成績社会でしたが、入試で高い点を取るなんて、機械ができる時代です。教育でそればかりやっていたら、創造性、生産性が上がるはずはありません。教育の質を上げることを本当に考えてほしい。渡辺先生、よろしくお願いします。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら