伊国債先物売りポジションが膨張する理由 国債のさらなる値下がりに賭ける投資家たち

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 11月9日、イタリア国債先物の取引が急増している。ローマで10月撮影(2018年 ロイター/Ahmed Jadallah)

[ロンドン 9日 ロイター] - イタリア国債先物の取引が急増している。同国政府と欧州連合(EU)の間で財政運営を巡る緊張が高まっている中で、売り持ちポジションが相当積み上がっている兆しかもしれない。

国債先物の売り持ちが膨らんでいるのは、夏場のイタリア市場の大混乱を受け、投機やヘッジが非常に活発化した結果だ。

もちろん、今後イタリアとEUの協議で突破口が見つかったり、格付け会社による前向きの評価が出て同国の債務を巡る見方が幾分改善すれば、国債市場の地合いが急速に持ち直す可能性も残っている、と投資家は話す。

ただイタリアのポピュリスト(大衆迎合主義)政権が実現を目指す拡張的な来年の予算案がEUの強い反対に直面している現状を見て、投資家はイタリア国債のさらなる値下がりに賭けており、その上で使える金融商品をできるだけ使おうとしている。

こうした中で裏付けとなる現物国債が極端なボラティリティの高騰を示しているにもかかわらず、先物市場ではヘッジファンドが存在感を高め、取引高が跳ね上がってきた。

ユーレックスによると、年初来の短期国債先物の1日当たり平均出来高は前年同期比40%増の約7万枚となり、長期国債先物の出来高も大きく伸びた。

また複数の市場参加者の見立てでは、出来高増加に伴って利回りが急騰し、建玉残高も膨らんでおり、投機筋が売り持ちをしたままでいることに満足している様子がうかがえる。

例えば短期国債先物の建玉残高は10月25日に過去最高の28万枚を記録し、過去2週間の平均でもずっと27万5000枚前後で推移している。

ブルーベイ・アセット・マネジメントの先進国市場責任者マーク・ダウティング氏は「大手ヘッジファンドを含めて、短期と長期の国債先物を通じてイタリア国債の大規模な売り持ちを構築している多くの投資家が存在している」と指摘した。

国債先物の人気と対照的に、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)はユーロ圏債務危機時の教訓を踏まえた規制強化の影響で、取引は縮小傾向にある。

証券保管・決済機関DTCCのデータに基づくと、6日までの週のCDS取引額は昨年初に比べて25%強減って120億ドル弱となっている。

ダウディング氏は、規制により投資家が純粋の投機目的でソブリンCDSを購入して売り持ちを構築できなくなった以上、売り持ちを実現する手段はイタリア国債先物になると説明する。

一方、国債先物は証拠金制度の下で名目取引額の一部を支払うだけで済むのに対して、現物もしくはCDSの場合、全額支払う必要がある。こうした面からイタリア国債の取引をする際に先物を利用する、とロンドンのあるマクロ型ヘッジファンドのポートフォリオマネジャーは話した。

(Abhinav Ramnarayan、Saikat Chatterjee記者)

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