BMW3シリーズ、7代目の姿形は何が変わったか デザイナーも「難しい」と唸る車種の最新進化

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最初に紹介したように、この日は3シリーズ以外にZ4と8シリーズのプレゼンテーションもあった。話を聞いて思ったのは、3シリーズとは異なる要素をいくつか取り入れていることだ。

3シリーズとはボディサイドの造形が大きく異なる8シリーズ(筆者撮影)

ひとつはキドニーグリル外側の尖ったポイントが下に移動し、ヘッドランプが斜め上に位置していること。スポーツカーについては今後、この造形でいくという。ボディサイドはドアの前にエアブリーザーと呼ばれるスリットを設け、そこからせり上がるラインに接する面に複雑な変化をつけることで後輪駆動らしさを強調したという。リアについてはコンビランプがL字を強調した三次元造形としていることが特徴となる。

トヨタ・スープラと共同開発されたことでも知られる新型Z4(筆者撮影)

これらの処理は今年、日本でも発売された新型「X4」をはじめ、偶数数字を使った多くのBMWに見られる。BMWの車種は奇数数字が実用系、偶数数字がスポーツ系と位置づけることが多い(2シリーズのような例外も出てきてわかりにくくなったが)。近年の造形を見ると、奇数と偶数のデザイン面での差別化が際立ってきたと感じる。その点を永島氏に尋ねると次のような答えが返ってきた。

チャレンジはクーペやSUVで仕掛けていく

「実用車はスポーツカーよりも車体寸法の制約が大きいからです。3シリーズで言えば、日本のガレージやパーキングのサイズも考慮しています。空気抵抗係数(Cd値)もそうです。新型3シリーズのCd値は0.24と、8シリーズの0.33より良くなっています。燃費の要求が厳しいためです。デザイナーとしては面を強調したいのですが、3シリーズのような車種ではなかなか難しいのが正直なところです」

3シリーズはBMWブランドにとって大黒柱的存在なので、外すことは許されないという内情が伝わってくる。その点、「SUVはカテゴリーの歴史が浅く形が決まっていないので、冒険の可能性がある」と語っていた。今後のBMWデザインはセダンやワゴンは手堅くまとめ、クーペやSUVでチャレンジを仕掛けていくという二面作戦を進めていきそうだと感じた。

森口 将之 モビリティジャーナリスト

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もりぐち まさゆき / Masayuki Moriguchi

1962年生まれ。モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。著書に『富山から拡がる交通革命』(交通新聞社新書)。

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