発行485万部の「古典の新訳」大ヒットの裏側 時代に合った選書と新訳で「現代作品」に
日本語としての単語と単語のつながりを無視したような訳文を、我慢しながら読んでいた時代は終わるべきだと考えたのです。西洋の難しい文学や思想だから、内容を理解できなくても仕方がないという明治期以来の翻訳観を覆す時期がついに来たのだと思いました。日本語の作品として理解できるものを目指したのです。
「古典=重厚で難解」の印象を極力なくす
そのためには、細かい工夫も必要となりました。注をページの左側に入れたのは、注を読んですぐに理解しながら読み進めるようにした結果です。必要と思えば、写真、イラストも躊躇なく入れました。時代も文化的背景もまったく違う古典を読むときに大きな障害となる事柄を、わかりやすく紹介するよう心掛けたのです。
また、充実した解説、年譜、訳者あとがきを付けることで、この作品を今なぜ読むのが必要なのかを説明しました。加えて、若い人にも手に取ってもらえるようカバーにも工夫を凝らしています。
文豪の顔写真などを使っていた従来の古典の文庫のカバーとはまったく違う、白を基調としたスタイリッシュなものを採用して、「古典=重厚で難解」という前時代の典型的な印象を極力なくすようにしたのです。
創刊から12年。このシリーズを読んで育ったという青年たちに会う機会が増えてきました。当初の予想よりもはるかに若い世代が、古典を読んでいることにうれしさを禁じえません。古典は古臭い、とっつきにくく面白くない、難しくて読むのが面倒。
かつてはこういうマイナスイメージばかりで語られてきた世界の古典を現代作品として読めるようにしたことは、それなりに評価されてきたように感じています。
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