普通の6人家族が「テロリスト」になった事情 世界中で増える「一匹狼型テロ」の恐怖

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ここで、ローンウルフと呼ばれる犯人像について説明しておく。

テロの指令国が、他国にいる複数のスリーパーを一斉に活動させようとするとき、何らかの通信連絡が不可欠である。だが今日、インターネット通信(ダークウェブを含む)を使って「打ち合わせ」をすると、公安捜査機関が導入済みのAI(人工知能)傍受システムが「トリガーワード」を検知するため、計画は露見し失敗しやすい状況にある。

ローンウルフ型のテロは予防が難しい

いわんや、今どき有線電話や無線電話でテロの相談ができるものではない。少なくとも欧米や中国であれば、会話中のトリガーワードを、傍受ロボットが聞き逃さない。結局、テロ計画の伝達者が、目立たぬように1人ずつ、メンバーに直接面会してミッションをこっそりと、しかし正確に、伝えるしかない。

しかしもし、その伝達者かメンバーの1人でも、当局から密かに行動を監視されていたなら、やはり計画は頓挫(とんざ)する。それどころか、一味が一網打尽にされるかもしれない。

かくして、同時多発テロのためのスリーパー動員が難しかったり、あるいはそうしたテロ風土がもともとない地域では、他者から直接の指令を受けることなく爆破や無差別銃撃等を企画し実行する、ローンウルフ型のテロ事件が起きる。

その犯行がはたして「無」から思いつかれたのか、それとも、どこかの誰かの「扇動宣伝」に触発されたのかは、結局わからないし、誰にも証明できない。そこが当局を悩ませ、社会がモヤモヤ感を抱く理由である。欧州でも北米でも、ローンウルフ型テロを予防する方法はほとんどないので、当局は戦々恐々としているのだ。

ローンウルフとは呼ぶものの、これは字義どおりの単独犯であるとは限らない。

たとえば1995年4月に、アメリカ南部のオクラホマシティ市にある連邦地方庁舎を、自家製爆弾を積んだ2トン・トラックによって全壊させ、168人もの命を奪った白人カトリック信者(ただし、アメリカ陰謀論カルトに染まっていた)のティモシー・マクベイは、陸軍時代の友人テリー・ニコルズから爆弾の材料を手に入れていた。

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