新垣結衣の「けもなれ」にモヤモヤな人の目線 世の中の汚さから距離を取っておいてほしい

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「獣になれない私たち」というタイトルだけあって、描かれているのは、晶が何かあっても理性的に対処してしまうことの葛藤。つまり、「いつか晶が本能を解き放つときが来るのか?」 という興味が求心力になっているのだ。1話でもすでに恒星が晶を誘っている。だがその時、晶は「徒歩3分でたぶらかされるほどバカじゃない」ときっぱり断り、ガッキーファンを安堵させた。

そして4話。ここまでの間、晶のストレスもたまりにたまっているため、いよいよか……とやきもきしたが、途中で恒星が寝てしまったので未遂に終わり、再び安堵。

脚本と演出と理解してはいるものの、このエピソードを見て思うのは、晶が覚悟を決めて恒星と向き合ったこういうとき、キスはするものなのかと躊躇することをはじめとして、なにかと手慣れてない感を出す彼女に、見ているほうはホッとすること。

パブリックイメージとの乖離

今カレ・京谷とも、もうひとりの存在の恒星(なにしろダブル主演)ともなかなか進展しない関係(ドラマのキャッチコピーは「ラブかもしれないストーリー」)をもどかしく思ってイライラする楽しみではなく、晶、いや、「ガッキーはガツガツ、サクサクいかないでくれー」っと祈るような気持ちになる。

新垣結衣とはそういう“見守りたい”感情を呼び起こす存在といえよう。親心、彼氏心、女友達心、なんでもいいが、誰もが彼女には、「世の中の汚いものから距離をとっていてほしい」と思ってしまう。

これまでの新垣結衣のパブリックイメージは「透明感」とか「清純」「健気」というものだ。

美白をうたった化粧品の「雪肌精」(コーセー)や、雪の中で歌うCMが印象的なチョコレート「メルティーキッス」(明治)など、彼女の出ている広告はそういう透明感や清らかさが大事にされている。なにより、彼女が注目された、「ポッキー」(江崎グリコ)のCMで踊っている姿の無邪気さ、思い切りのよさ、伸びやかさ。これが10年近く経った今でも強烈に彼女のイメージを作り上げている。

今年、興収90億円を超えた大ヒット映画『コード・ブルー —ドクターヘリ緊急救命—』(2018年)で新垣が演じたヒロイン・白石恵は勤勉なフライトドクター。黒髪をキュッと後ろで1本に縛っている姿は清潔感にあふれ、飾りっ気のないつなぎのユニフォームは仕事にすべてを注ぐ真摯さを象徴している。

「リーガルハイ」(フジテレビ)シリーズの新人・弁護士・黛は「朝ドラのヒロインのよう」と言われてしまうほどのきまじめキャラ。ボブカットで地味なスーツ姿が清楚さと知性を漂わせる。不正を許さずまじめに突進していくさまは、主人公・古美門(堺雅人)でなくともイジメたくなる。打たれ強いのでイジメがいがあるのだ。「けもなれ」で言えば、やたらと仕事を押し付けてくる会社の社長・九十九(山内圭哉)は、そんな感じで晶にあれこれ言っているように映る。

社会的ブームになるほどヒットした「逃げるは恥だが役に立つ」(TBS、2016年)の主人公・森山みくりは、恋愛経験がそこそこあり、相手役の恋愛に不慣れな平匡(星野源)を手取り足取り導く役ではあったが、グイグイ行くのではなく、まじめな教師や看護師のように、相手を決して萎縮させない雰囲気だった。

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