パワハラ被害を「自分のせい」と悩む人の盲点

理不尽に対し「逃げるは恥だが役に立つ」

ただし、ここには「企業規模」の格差が存在する。従業員1000人以上の企業では98%とほとんどの企業で相談窓口を設置している一方で、従業員99人以下の企業では44%にとどまっている。調査時の企業の分母数が明記されていないため正確ではないのだが、日本における中小企業は400万社を超えることから、かなりの数の企業で相談窓口を設置できていない状況といってよいだろう。

まさに川島さんのようにパワハラの被害に遭っているにもかかわらず、対処ができなくて悩んでいる人がたくさんいるはずだ。

「そんなにつらいなら会社を辞めればいいのに」といった声もあるだろう。同じく毎日、顔を合わせる上司からの度を超えたパワハラで悩み、今年9月に私の下へ相談に来た桜井文彦さん(仮名、46歳)は「私は辞めたくないのです」と話していた。

どうしても辞められない理由

埼玉県の中小企業に勤める桜井さんは前職(飲食店向け営業)でリストラに遭い、失業から1年強の間、無職状態だった。今の会社には「何でもいいから仕事に就きたいと半ばやけくそになっていたときに拾ってもらった」経緯がある。

妻からは「辞めてほしい」とも言われているが、本人は仕事自体にもやりがいがあり、辞めるという選択肢をなかなか取れない。「辞めたくなければ耐えるしかないのでしょうか」とも嘆いていた。

なぜ、このようなことになるのだろうか。このようなパワハラの攻撃を受け続けると、「自分が頑張れば(耐えれば)いいのだ、自分の努力が足りないんだ」といった思考に陥ってしまう。特に転職活動で苦労をした場合は、その傾向も強く、上司から理不尽な言動を受けたとしても「自分のせい」と思い込んでしまう。その連鎖が自分を追い込み、一般的な判断ができなくなるくらい肉体的、精神的に病んでしまう。

その仕事がパワハラ被害者の志を体現するための唯一無二の仕事であれば、頑張りどころかもしれない。今の状況を改善するための努力が必要になる。しかし、そこまでの価値がないのであれば、今の会社に居続ける必然性もない。会社を辞めてしまうのも立派な自己防衛策だ。

パワハラの被害者は、正常な判断ができないほど、閉鎖的、盲目的になっているケースが少なくない。その行為がパワハラだと明確に自覚できていないことすらある。大事なことは「1人で抱え込まない」。そして、理不尽な言動に対して「逃げる」という選択肢は誰にも与えられている。2016年にTBS系で大ヒットしたテレビドラマのタイトル名を借りれば「逃げるは恥だが役に立つ」。それは決して人生における「負け」ではない。

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