マルチ販売は合理的だが生保免許のために断念した--米田光生・アイリオ生命社長

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--多段階(マルチ)販売は行わないとのことですが、もともとは保険会社化しても多段階(マルチ)販売を維持する方向でした。

そうです。多段階販売は合理的な販売方法だと考えています。エキスパートでは契約者が支払う掛け金の負担をできるだけ軽くするにはどのような販売方法がいいかを検討し、広告費や人件費などのコストをできるかぎりかけない販売方法として多段階方式を採用したのです。だから何段になるかわからないが、多段階販売は継続したいという意思表示は当初からしていました。金融庁とも、どうやって多段階でやっていくかという議論を続けていました。

ただ、私たちが正しくやっていても、世間ではマルチはものすごくたたかれるわけですよ。「マルチ」イコール「悪」みたいに。これは外部環境が整わないと無理だなと。それで個人代理店による通常の販売方式を選択しました。ここで粘って、認可が遅れるよりは、エキスパートの共済契約を無事にアイリオ生命に移管すると同時に、代理店にも従来どおりの手数料を払い続ける、これが最優先だということで交渉しました。

--持ち株会社の下に一般事業会社もあります。こちらのほうは多段階方式のままですね。

そのままです。エキスパートグループの特徴は、生保と一般事業会社が共にその中にいることです。家計を助けるといっても、生命保険は家計費の一部でしかありません。9割は他の生活用品に充てられる。この生活用品を支えるのが一般事業です。1人の人からいろいろなものを買えるほうがお客様にとってもよいし、代理店にとってもお客様にお話しする間口が二つできる。保険だと保険しかないわけですから。ただ、誤認防止は徹底しますよ。金融庁から言われる以前から、誤認防止だけはちゃんとしましょうと。

--誤認防止とは?

たとえば、お客様のところに行くときに、今日は一般事業の話で来ましたと前置きして、その話をする。終わった後で、私は同じグループのアイリオという保険会社の代理店もやっています、今度一度保険のことでご相談をさせてくださいと。内容をきちんと分ける。それをセットでやったり、一般事業の話で行きながら、保険の話をしちゃったりとか、それはダメです。特定商取引法で禁止されていますから。誤認防止のところは必要以上に神経を使いすぎるくらい使いました。

--一般事業とのコラボレーションも狙うのであれば、「エキスパートアライアンス生命」という社名でもよかったのでは?

いや、それこそ誤認の最たるもので、これはまったく違う名前にしようと。ただ、気持ちとしては、グループの一員であるということは代理店さんには言っています。

--世間でマルチ販売について、うがった見方をされていますね。

多段階の保険会社はアメリカとか、ヨーロッパとか、アジアでも認められていますが、私も誘われたときには、三歩くらい後ずさりした(笑)。でも、エキスパートにかかわってみると、まじめにやっている、きちっとお客様のことを考えている人がいっぱいいるんです。ところが、不祥事を起こす会社があるから、「やっぱりね」となる。経済産業省と金融庁にきちっと厳しく規制してもらいたいですね。

よねだ・みつお
1949年生まれ。上智大法卒。アリコジャパン首都圏営業統括部長、アクサ生命取締役、あおば生命チーフカスタマーオフィサー等を経て、2006年エキスパートアライアンス社長。08年より現職。

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