ブラジル新大統領にキューバが震撼する事情

危険なボルソナロ氏が考えていること

そして今、来年1月にボルソナロ氏が大統領に就任することになって、恐怖を感じているのがキューバ政府である。ボルソナロ氏はテレビ討論で、「(ブラジルの)過疎地帯にまで派遣されているキューバ人の医師を排斥して、公共支出の削減をさせる」と発言しているからだ。

ボルソナロ氏は、キューバが2013年から実施しているブラジルに医師を派遣する制度「もっと医師を(Mais Médicos)」を廃止する意向を選挙戦中も表明していた。

医療団の派遣で年間1兆超を獲得?

この制度は、キューバのラウル・カストロ(当時)評議会議長とベネズエラのウーゴ・チャベス(当時)大統領の間で生まれた制度であった。キューバからベネズエラに医師と看護師を派遣する代わりに、ベネズエラから安価な原油をキューバに供給するというものであった。当時、ブラジルはジウマ・ルセフ前政権下でチャベス氏とも同胞という意識があり、この制度をブラジルも早速採用した。

キューバは、それ以前から外国に医師や看護師の派遣を行っていたが、派遣する医療団の数はベネズエラへの派遣が始まるまで大規模なものではなかった。だが、ベネズエラへの派遣が始まると、これが外貨獲得につながる最大の「人的輸出資源」として成長していった。報道によると、キューバ政府はこれにより年間115億ドル(1兆2650億円)の歳入を得ているという。

現在、ブラジルには18240人のキューバ人医師と看護師が派遣されている。ブラジルの4058の自治体と原住民居住の34地区に派遣されており、ブラジルはキューバ人医師1人当たり毎月10482レアル(31万円)を謝礼としてキューバ政府に支払っているという。ところが、その75%はキューバ政府の歳入となってしまい、派遣されている医師には一部しか支払われていない、という報道もある。

ボルソナロ氏は選挙戦中の公約として、キューバから派遣されたすべての医師が、ブラジルの医師資格協会から認定を受けることを義務づけるとしている。この認定をパスしたキューバ人医師がブラジルで継続して働きたい場合は、彼らの家族が3年間在住できるようにビザも発給し、給与もキューバ政府に支払うのではなく、医師に直接支払うと公約している。

キューバから派遣された医師はボルソナロ氏の提案を好意的に受け取っているという。なぜならキューバ国内では彼らの給与は約60ユーロ(7800円)にしかならず、ブラジル政府から給料が支払われるようになれば収入が増えるのは明らかだからだ。一方、キューバ政府はボルソナロ氏の提案が実施されることになれば、ブラジルからの歳入が減ってしまうことを懸念している。

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