ブラジル新大統領にキューバが震撼する事情 危険なボルソナロ氏が考えていること

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現状では、派遣された医師がブラジルにとどまろうとしてブラジルの医師の資格を取得しようとしていることがキューバ政府に発覚すると、即座に帰国を命じられることになっている。こうした中、派遣された医師の中には、政府に対して抗議する医師もいるという。電子紙「Diario de Cuba」によると、200人のキューバ人医師がキューバの医療関係当局の意向に従いたくないとして訴えている。

貧困国には無料で医療団を派遣している

この派遣に関係して現在問題になっているのは、キューバ政府がブラジルに対して未払いになっている1750万ドル(19億2500万円)が返済されていないとされることだ。

テメル現大統領は、返済がこれ以上遅れるのであれば医師の派遣費用を今後は支払わない意向であることを、ディヨゴ・オリベイラ開発計画大臣に伝えたという。この未払金はルセフ前大統領の時に、キューバのマリエル港の開発費用として7億ドル(770億円)をキューバ政府に融資したものの一部だ。

こうした状況下、2019年度はキューバからの派遣医師を1000人削減する意向であることをブラジル政府は示している。一方、キューバ政府もすでに、ボルソナロ氏が大統領になる可能性が生まれた時点から、ブラジルへの医師の派遣を中断しているという。輸出商品が粗糖や葉巻といったわずかな品目しかないキューバで、医師と看護師の派遣がブラジルの市場からなくなれば重要な歳入が減ることが懸念される。

ちなみに、キューバは62カ国にキューバ人医師を派遣している。その内訳は、ラテンアメリカの24カ国、サブサハラ27カ国、中東と北アフリカ2カ国、中央アジアと太平洋7カ国、それにロシアとポルトガルにも派遣されている。

その見返りに派遣された国からキューバ政府は報酬をもらっているが、ハイチやボリビア、エルサルバドル、グアテマラなど経済的に貧しい国に対してはボランティアとして医師団を派遣している。

こうした報道がすべて事実であれば、確かにキューバ人医師にとっては、ブラジルでより高い給与を得るチャンスになるかもしれない。一方で、キューバがそれなりに経済的に余裕のある国から外貨を獲得していることによって、貧困国に質の高い医療を提供できているという側面があるのも確かで、ブラジル政府にその代わりができるわけではない。

ラテンアメリカに登場したブラジル版トランプは、これまでのラテンアメリカの秩序を大きく変える可能性があり、油断ならない。

白石 和幸 貿易コンサルタント

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しらいし かずゆき / Kazuyuki Shiraishi

1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究も手掛ける。著書に『1万km離れて観た日本』(文芸社)。

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