「戦略を持たない」戦略に現実味がある理由 「経営戦略論は役に立つのか」対談:後編

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歴史から学ぶ、その価値はいつの時代も色あせない(写真:nzphotonz/iStock)
経営戦略という学問は、経営実務の世界では役に立つのだろうか。有史以前からAI時代に至る戦略論の議論を俯瞰した大作『経営戦略原論』が、ベンチャー企業の経営者の間でも話題になっている。
本書をいち早く読んで、「一気に読んでしまった。これは常に携帯すべき本だ」とSNSで発信したのが、マッキンゼーやグーグル、リクルートなど、12の会社で働き、近刊『どこでも誰とでも働ける』が話題のIT界のエバンジェリスト、尾原和啓氏だ。
今回は、同書の著者である慶應義塾大学准教授の琴坂将広氏と、尾原氏と対談。経営戦略はどう役に立つのかを語った。

前編:「出自」がわからない経営戦略論は有害無益だ

尾原:僕はマニアックなので、本や論文を読んでいて、気になったら、ひたすら原典に当たり、その原典と同時代の哲学書やニュースを読み、「なるほど、この影響でこの人はこう考えたのか」というように、ずっと考えていく習慣があります。

『経営戦略原論』(琴坂将広著/東洋経済新報社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

琴坂:だから、私の『経営戦略原論』が尾原さんに刺さったのですね(笑)。尾原さんがこの本を単に一読するだけではなく、私が想定していた理想的な使い方、読みながら、そこで引用されている原典にもあたっておられると聞いて、とてもうれしく思いました。

一般の読者の皆さまには、500ページもありますので、そもそも一読するだけでも大変かもしれませんが、そこで折れないでほしいというのが、著者の希望です。折れなければ、必ずその先の世界があるからです。サッカーと同じで、最初は大変でも、ある一定以上になると、すごく楽しくなる。その瞬間に立てれば、いろいろなものの共通性が見えてきます。

学習を積むことで共通のパターンが見抜けるようになる

琴坂:たとえば、インターネットのスタートアップが今やっていることは、経済成長期に「オロナミンC」や「チキンラーメン」などのメーカーがやってきたこととあまり変わりません。

当時は、小売業で大規模なハイウェーのような動脈が日本中に形成され、そこにテレビの普及率が上がったことが重なった。その結果、いいモノを作って、大胆な投資をして、きちんとマーケティングをすると、一気に広がるようになりました。そのチャンスをとらえて、そこにリスクをとったプレーヤーが、今の大手食品なのです。

そして今、インターネットでも同じようなゲームが展開されています。メルカリは後発企業ですが、そういうゲームのルールを心得ていて、リスクを取って一気に広げています。

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