大再編が進む医薬卸...それでも変わらぬ薄利体質
医療用医薬品卸の業界に、異変が起きている。今中間期を終えた大手4社はそろって通期の業績予想を下方修正した。4社の業績予想合計は、売上高6兆9254億円と期初予想から101億円増額されたにもかかわらず、営業利益は682億円と291億円もの大幅減額。4社とも減益に陥る見通しだ。
業界2位アルフレッサホールディングスの渡邉新社長が渋い顔で説明する。「顧客との価格交渉が難航し、想定していた以上に販売価格が大幅に下落した」。
価格交渉に1年以上 特異な商慣行が常態化
この10年で、医薬品卸の社数は約半分に激減した。買収に次ぐ買収で、大手4社が業界で約9割ものシェアを握る巨大グループに集約。さらに今年10月、首位のメディセオ・パルタックホールディングスとアルフレッサが経営統合を発表し、来春には4兆円規模の最大卸アルフレッサ・メディパル ホールディングス(AMPH)が誕生する。
ところが、ここまで再編淘汰が進んでいるにもかかわらず、実は各社とも効率化が進むどころか、利益率は下がる一方。91年度に12・7%だった業界全体の売上総利益率は、06年には7・9%にまで下落している(下図参照)。
その要因の一端は、医療費抑制を目的に2年に一度実施される薬価(医薬品の公定価格)引き下げにあるが、もう一端は医療機関などの強い値下げ圧力と、それに伴う業界特有の取引形態にある。
「値引きに応じないと取引停止を持ち出されることもしばしば。得意先を失わないために、無理な値下げにも応じざるをえなかった」(ある大手卸社員)。淘汰が進んだ過去10年、卸各社はシェア獲得に躍起となり、得意先の値下げ要請をただのみ込んできた。競合他社が価格を下げれば、それよりもさらに低い値段をつけざるをえない。そのため、得意先はほかの医療機関の値引き率をもとに交渉したがる。結果として業界では、先に商品だけが納入されたまま、価格交渉が1年以上も長引く「未妥結・仮納入」という“特異”な状況が常態化していた。