大再編が進む医薬卸...それでも変わらぬ薄利体質


取引是正が裏目に 危機感抱く卸のジレンマ

昨年9月、厚生労働省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」は、業界に「納入価格の早期(6カ月以内)妥結」を求める緊急提言を出した。一定の成果が出なければ、公定マージン制の導入も辞さないとの強硬姿勢を伴ったものだ。
 
 厚労省としては、この“特異”な状況に対し「商取引として当たり前の姿を求めた」(医政局経済課・五十嵐浩首席流通指導官)だけのこと。卸側も「業界にとって避けては通れない道」(メディセオ・パルタックの熊倉貞武社長)と、その必要性を認識していた。ところが1年後。事態は想定外の展開を見せる。

11月5日に報告された取り組みの結果では、早期妥結率は7割にも達し一定の評価を得た。が、その裏で卸各社は、早期妥結と引き換えに大きな代償を負っていたのである。何としてでも「早期妥結」で一定の成果を上げなければならないと焦る一方、得意先を競合に奪われる危惧からは逃れられない。そのジレンマから、各社とも想定以上に低い価格提示に迫られてしまった。確かに、早期妥結に向けては一時的な販価下落を見込んではいた。だが、「半年でここまで急落するとは」(卸社員)と現場も戸惑いを隠せない。

さらに悪いことに、大規模病院は早期妥結にさえ応じなかった。特に、取引高の多いベッド数200床以上の病院では、早期妥結率は5割以下にとどまった。ある基幹病院の関係者が打ち明ける。「期末に近づくにつれて安くなるという経験則があるため、早期妥結と言われても応じにくかった」。渡邉社長は「すでに早期妥結に協力してくれた得意先が損することのないよう、下期は不退転の覚悟で臨む」と話すが、上期にできなかった交渉が下期にスムーズに進むという確証はない。

今回の取り組みによって、自らの立場の弱さを再認識させられた卸各社が、今後進むべき道はどこにあるのか。これまでも各社は、利益率の低下を何とか食い止めようと、人員削減やIT導入による効率化などコストの削減には力を尽くしてきた。熊倉社長は「未妥結先には(上期の悪業績を材料に)経営としてもうこれ以上譲れないとアピールする手段もある」と心の内を明かす。

4兆円超もの規模を誇るAMPHの発足によって、卸業界全体の発言力が高まるのではないかという声もある。だが、規模ならこれまでも十分に拡大してきている。

高度な商品知識を要する営業スタッフや、多種の医薬品を多数の医療機関に迅速かつ安全に供給する物流網を持つ卸は、医薬品流通においてなくてはならない機能を担う。こうした機能の価値をいかに訴求し、得意先に翻弄されない立場を確立するか。それができなければ、4兆円企業は単なる見かけ倒しで終わるばかりか、業界全体の衰退にも歯止めをかけられない。

(前野裕香 撮影:代 友尋 =週刊東洋経済)

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