神戸洋菓子店が破綻、「地方スイーツ」の落日 老舗「モンブラン」破綻が意味すること

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神戸は依然、スイーツの一世帯当たりの消費量は全国トップだが……(写真:gandhi/PIXTA)

「地方スイーツ」終焉の始まりなのか。「至高のモンブラン」「お・も・て・な・し半熟チーズ」などの人気商品で知られる神戸の老舗洋菓子チェーンを展開するモンブランが10月22日、事業停止し、自己破産の申請準備に入ったことがわかった。帝国データバンクによると、負債額は約3億2800万円に上る。

現在、17店を経営するモンブランは、1963年に兵庫県加古川市で創業。2000年代に入って多店舗展開を加速させ、2017年以降も神戸市内に3店も出店していた。帝国データバンクによると、競争激化が加速し、原材料費が高騰する中、積極出店したコストを吸収しきれなかったようだ。経営判断の誤りと言えるが、背景にある問題はモンブラン1社だけのものではないと考えられる。

国内スイーツ市場は縮小傾向

富士経済の予測によると、国内スイーツ市場は近年縮小傾向にあり、今後もマイナスが続く見込みだ。コンビニ、量販店は拡大するが、チェーン店や個人経営店は縮小していくという。その1つがモンブランだったというわけだ。

モンブラン事業停止の背景には、スイーツシーンの変化と地方都市としての神戸の位置づけ、2つの要因があると考えられる。

1つは、スイーツシーンの変化だ。昔はお菓子と言えばケーキか和菓子で、ケーキは贈答品、家族での祝いごとに欠かせないものだった。家族ぐるみの付き合いが多く、家庭を訪問する際の手土産や中元・歳暮などに洋菓子は使われていた。しかし、人々のライフスタイルが多様化したことにより、家庭訪問も、中元・歳暮のやり取りも減ってしまった。

2000年前後にスイーツブームが盛り上がったことで、洋菓子の人気はいったん上昇。当時は、『料理の鉄人』のヒットでシェフに注目が集まっており、1999年に鉄人に挑戦して勝った辻口博啓氏がカリスマ的な人気を誇った。同時期に起こったデパ地下ブームも、スイーツブームを盛り上げる要因となった。

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