メルカリは上場してからどう変わったのか 小泉文明社長ロングインタビュー

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小泉:同じ言葉を繰り返し言い続けることが大事だと思っていますね。同じことを何度もやらないことには、ブランド創りが始まりません。「もう聞き飽きた」というリアクションが出るようになって、初めてみんなの中に刷り込まれているものです。だから、しつこく言うわけです。僕自身は、明るい宗教だと思っていますね(笑)。社歌を歌うとかになってくるとちょっと今っぽくないと思うけど、バリューを会議室の名称にしているとか、明るくみんなが使える雰囲気で、「その判断、もっとGo Boldにやるべきだよ!」とか、気軽に口にするような環境にすることが大事だと思います。だから、マネージャーにはバリューの体現者となることを課していますね。そうすることで、「それって、小泉さんの好みじゃないですか?」などと反論された場面で、「いやいや、メルカリのバリューがこうだからね」といった具合に説明でき、一本筋が通るわけです。

作っただけで満足してしまうのではダメ

小林:3つという数はかなり意識したものなのでしょうか?

小泉:完全に意識していますね。4つ以上になると、なかなか人間は覚えられませんから。

小林:私も実感としてよくわかります。バリューを5つ作るという会社はよくありますが、5つだと使われ方にムラが出たりするんですよね。ある部署では1、2、3をよく意識しているが、別の部署だと1、2、5を意識している、といったように。それだと、せっかく一体感を高めるためにやったはずなのに、逆に部署間での違いを生み出すことにもなってしまいますからね。一方、3つに絞り込んでいるとそんなことにはならない。

4つ以上になると、なかなか人間は覚えられませんから(写真:Signifiant Style)

小泉:やはり、作っただけで満足してしまうのではダメです。ちゃんと刷り込まれることまで意識すれば、3つという数が限界だと思います。僕たちもバリューを作る際に、ミッションや10年後のメルカリの姿をイメージしながら思いついたものをどんどん書き出してグルーピングしていったら、6つぐらいのカテゴリーになりました。でも、4つ以上は難しいから、そこから先に取捨選択し、チャレンジ、チームワーク、専門性に絞っていったわけです。

小林:世の中の多くの会社は作りすぎですよね。仮に復唱はなんとかできたとしても、実際に普段から使っていなければ意味がありませんから。

小泉:会社のバリューを使って社員たちが言葉遊びを始めるレベルまで達しないとダメですよね。オンだけでなくオフのシーンでも、たとえば社内の部活で「もっとGo Boldに走ってくださいよ!」といった具合に出てくるようになれば完全に消化したと言えるでしょうし、僕たちもその状況をめざしています。

小林:なるほど。これからもメルカリがGo Boldな展開を遂げていくことを大いに期待しています。本日はお忙しい中、貴重な話をうかがえてありがとうございました。

(ライター:大西洋平)

Signifiant Style

シニフィアンスタイル(Signifiant Style)は、起業家、上場企業経営者、バンカーといったバックグラウンドを持つメンバーによって創業された、シニフィアン株式会社が運営するビジネスメディア。シニフィアンでは、IPO後もなお精力的に事業を成長させ、新たな産業の創出と発展に寄与しようとする意志を持った会社のことを、”Post-IPO Startup”(ポストIPO・スタートアップ)と定義。ポストIPO・スタートアップの活躍こそが、日本におけるスタートアップ・エコシステムのさらなる拡充と、日本経済の発展に不可欠であると考えています。シニフィアンスタイルでは、ポストIPO・スタートアップの事業活動や経営に関する知見の情報発信に取り組んでいきます。本サイトはこちら

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