メルカリは上場してからどう変わったのか 小泉文明社長ロングインタビュー

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

小泉:その事業をやるのかやらないのかとか、大枠の部分は経営陣で決めますが、それから先の「どうやって山に登るのか?」という戦略については経営陣も確認はしますが、実行含めかなりの部分を現場に任せていますね。ただ、「みんながけっこう頑張っているけど、これはちょっと無理かも?」といった状況の場合は、どれだけ現場が高い理想を追求していても、経営陣の判断として冷徹に打ち切りますね。3カ月の1度のオフサイトで大きな方針を決めて、そこから3カ月はそれに向かってみんながオーッと突っ走っていくという感じです。

小林:見事に経営と執行が分離していますね。続けるのか続けないのかという部分は、経営陣が決めるべきことで、それが社内でちゃんと認識されているから現場も納得するということでしょう。

小泉:それに、当社ではほとんどの情報がSlack(ビジネス向けチャットツール)を通じてオープンになっていて、社内の人間は誰もが目の前でどんな話が進んでいるのかがわかっています。

小林:把握する側としては、Slackのやりとりから雰囲気や温度感がわかると思います。では、上が決めたことを現場に伝えることについても、やはりSlackを通じてなのでしょうか? それとも、別のアプローチなのでしょうか?

社内の人間は誰もが目の前でどんな話が進んでいるのかがわかっています(写真:Signifiant Style)

小泉:僕たちは毎週金曜日に全体定例会を開いていますが、プレゼンテーションにだらだらと時間を費やすようなことはやっていません。経営陣が決めたことを伝える場として、何らかの大きな戦略を打ち出す際や人事政策を大きく見直す際などには、僕と進太郎さんと濱田が前に出てパネルディスカッションを全員の前で行っています。聞く側も話す側も、1対1のプレゼンテーションはけっこう疲れてしまうじゃないですか? その点、パネルディスカッションは聞く側も話す側も気が楽です。それに、その後でフリーのQ&Aでは、かなり率直な意見も出てきて刺激になります。だから、パネルディスカッションは非常にオススメです。

小林:率直と言えば、どういった内容の意見や質問が多いのでしょうか?

小泉:事業のことにしても組織のことにしても、いろいろ出てきますよ。「その事業から撤退する背景を教えてください」などと突っ込んでくるケースもありますし、「撤退することを納得できません!」という意見をぶつけられることもあります。僕たちとしても、そうやってはっきりと言ってくれたほうが「なるほどな」と思えるのでありがたいです。Q&Aもシステムで誰でも投稿出来るので、結構Qが多い日もありますし、時間の都合でその場で回答できなかったことは、Slackで事後報告するようにしています。

IPOの計画でさえ、社内で情報公開されていた!

小林:外向けのPRが上手な会社だということは前々から認識していましたが、インナーコミュニケーションに関する工夫にも突出して長けていることを痛感しました。いつ頃からそうしたことに意識を払われるようになったのでしょうか?会社の拡大に応じてなのか、あるいは前職時代の経験に基づいて進めてきたことなのか。

小泉:特に深く意識したことはなく、外だけでなく社内に対しても誠実に応えていこうと思っていただけですね。そもそも経営陣が隠していたとしても、社員は気づいているので。

小林:株式市場に上場する前後で、そういった情報開示の体制に変化はありましたか?

次ページ社内で情報格差を生じさせたくない
関連記事
トピックボードAD
ビジネスの人気記事