メルカリは上場してからどう変わったのか 小泉文明社長ロングインタビュー

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小泉:インサイダー情報とか、上場企業として守るべきモラル面に関しては今まで以上に徹底しようという話はしましたが、他は特にないですね。もっとも、「もっと私たちのことを信じてください」と言われましたけど。IPOにしても、通常なら社内にもその直前になってから告知するものでしょうが、当社は計画している時点からいつどこで上場することをめざしているのかを社内では共有していましたね。ここから先の情報を明かさないというルールを作るのは、社員を信じていないからであって、そうしないとトラブルが起こりうることを前提に会社を作っています。とにかく僕は、社内においてそういった情報格差を生じさせたくないと考えています。

小林:ただ、「言うは易し」で、たとえばM&Aの案件が舞い込んできた際に、そのことについてどこまでオープンにするのかの判断が悩ましくなってきますね。

自分たちで自由に情報を入手してくださいというスタンスにしました(写真:Signifiant Style)

小泉:そのようなケースでは、インサイダー情報の扱いとして、やはり上場企業としての作法を守っていくことになります。だけど、例外的なケースを除けば、当社は情報をオープンにするのが基本ですね。情報をどのように得ていくのかに関しても、社員のセンスが問われるのだと思っています。

小林:まさに、そこがカギとなってくるところですね。そもそも情報共有の仕方に関して、経営陣側がメンバーに対して共有する情報量を制限するというのは情報管理のよくある例ですが、結果的にメンバーからすると部分的な情報しか持てないために、全社の目的が何なのかが掴めず自律的に動けない状況を生み出してしまっている、というパターンはよく耳にしますよね。

小泉:僕たちもベンチャーのフェーズから社員が100人を超える規模にシフトしていった場面で、情報共有の仕方について再考しましたね。昔は自分たちのところに情報が漏れなく集まり、そのすべての承認に関わっていたのに、頭越しで決まってしまうことがどんどん増えてしまったと不満を感じる人が出てきているように思えたからです。そこで、すべてをオープンにするので、自分たちで自由に情報を入手してくださいというスタンスにしました。

小林:それは、非常にいいメッセージかもしれないですね。オープンであるだけに、むしろやましいことはしづらくなり、自浄されていくという側面も出てくるでしょう。

小泉:逆にオープンになりすぎていて、当初は戸惑いもあったようです。だけど、慣れちゃうとすべてが早いですよ。だって、どこで何をやっているのかすぐにわかりますから。

小林:確かに、前職を振り返ってみても、情報共有のための会議が全体の5割程度を占めていましたね。

まさにメルカリは、IT業界におけるGE!?

小林:ところで、起業経験や経営経験の豊富なスター軍団が経営陣として集結する一方で、設立当初からずっと現場で頑張ってきた人たちもいるわけで、社内の雰囲気として何らかの違和感のようなものはうかがえないのでしょうか?

小泉:その点については、役員に抜擢された後のパフォーマンスによって、「やっぱり○○さんはスゴイ!」とかいった具合に、自然と馴染んでいくものですね。成果を出せるように経営陣のサポートが必要だと思います。会社の規模が大きくなってくるとポジションも増えてくるし、いろいろなキャリアパスもあるので、行き詰まり感のようなものがないようにしていきたいですね。

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