メルカリは上場してからどう変わったのか 小泉文明社長ロングインタビュー
小林:それにしても、どうしてメルカリにはここまで経験豊富で優秀な人材が集まってくるのですか? 多くの会社がそういった人材の獲得をコミットしているものの、なかなか実行できていません。いったい、どうやってスカウトしているのでしょうか?
小泉:具体的なアプローチに関しては、さすがにちょっとお答えできないですね(笑)。それはともかく、最後は人でしか解決できないことって、意外とネット系のビジネスでは多いものです。製造業ではないので、人のマインドやモチベーションにかなり左右されるという側面があります。
小林:私も前職の経験からIT系の人材がどういった職場を求めているのかについては推察できるのですが、IT系以外の人たちはどうなのでしょうか? たとえば、過去にDeNAとグリーが採用競争を繰り広げた際には、官公庁や大手製造業、大手商社などから人材が流入してきました。
小泉:メルペイの青柳さんのようなネット大手からだけでなく、執行役員CFOの長澤さんは金融出身ですし、執行役員VP of People & Cultureの唐澤の前職は日本マクドナルドの社長室長で、まったく別の業界から人が入ってきているのも確かです。ネット業界自体の裾野も広がってきていて、10年前とは全然違いますね。
小林:ミクシィ時代の苦労を教訓に、メルカリの経営ではあらかじめ手を打っておくべきことに対してしっかりと取り組んだという主旨の発言を小泉さんがなさっていたという記憶があります。特に強く意識したのは、どういったことについてですか?
プロダクトにはライフサイクルがあるが、バリューは不変
小泉:やはり、プロダクトにはライフサイクルというものがありますよね。ミクシィの場合は新しいものを創りたいという創業者の笠原さんのカルチャーが根づいていたからこそ、モンスターストライクのような大ヒット作を次々と生み出せたのでしょうが、普通の会社なら起死回生を果たせずに消えていったと思います。だから、メルカリでは会社とサービスとを分けたいなと考えていました。サービスには入れ替わりが出てくるもので、それとは別に会社として何がミッション(基本理念)で何がバリュー(行動指針)なのかということをしっかりと定義づけすることが大事だと思ったのです。サービスが変わったとしても、そのベースとなる会社としてのミッションやバリューに揺るぎはないということです。だから、PRについてもサービスとコーポレートとを使い分けていますね。サービスのPRでは20〜30代の女性を中心としながらも、いろいろな人に使っていただきたいというメッセージを込めています。一方で株式会社メルカリとしては、テクノロジーの匂いが漂っていて、優秀なメンバーが集結してイノベーションを起こそうとしていることをアピールしたいと思っています。だから、「メルカン」のようなオウンドメディアを通じて情報発信をしているわけです。
小林:確かに、メルカリの場合はサービスとコーポレートのイメージがかなり違うように感じますね。
小泉:たとえばグーグルという1つのブランドがあって、そのイメージがしっかりと確立されているうえで、検索エンジンのみならず様々なサービスを手掛けていますよね。僕たちがめざしているのもそれと同じで、いろいろなサービスを展開する可能性がある中で、まずはメルカリという組織のブランドを作っていくことが重要だと考えています。